12月12日の畜産物価格決定に向け議論開始、肉用子牛生産者補給制度の見直しもテーマ/自民党

畜産日報 2018年12月6日付
〈牛受精卵の持ち出しなど問題や、岐阜県の3例目の豚コレラも説明〉
自民党の畜産・酪農対策委員会(委員長=赤澤亮正議員、衆・鳥取2区)は12月5日、2019年度畜産物価格決定・関連対策に向けた議論をスタートさせた。今後、現地視察(北海道・南九州)を踏まえた上で10日から会合を重ね12日の価格決定を目指す。会の冒頭、赤澤委員長は「畜産物価格は毎年年末に決定している。19年度の決定のために既に群馬県、栃木県の現地視察を終えた。週末には北海道・南九州での調査を行い、12日に価格決定・報告する。生産者が元気の出る畜産物価格、畜産・酪農の発展につながる畜産物価格を決定したい」とあいさつした。

野村哲郎・農林部会長(参・鹿児島)は「畜産物価格の決定以外にも、TPP大綱でまとめていた肉用子牛生産者補給金制度の見直しが大きなテーマになる。また、ショッキングではあるが、牛の受精卵が日本から中国に持ち出された。吉川農水大臣も刑事告発も辞さないと談話で述べている。種の保存が重要な時期にも関わらず、なぜ密輸されるのか。さらに岐阜県では豚コレラの3例目が出た。沈静化したと思ったら出る。中国ではアフリカ豚コレラがまん延している。いつ日本に入ってもおかしくない状況にある」と話した。

会合では、農水省から、畜産をめぐる情勢と肉用子牛生産者補給金制度の見直しについて説明を受けた後、質疑に入った。

質疑のなかで葉梨康弘議員(衆・茨城3区)は、「目先では枝肉も乳価も高く、コスト削減もあり儲けは良い。本当にそれで良いのかを議論する必要がある。1~2月に畜産物価格を決定していた時は、長い目の議論ができていた。当時は配合飼料が高騰し、自給飼料基盤をいかに作るかを議論していた。枝肉価格が上がり、所得も良くなっているが、自給飼料基盤が下がっている。余裕がある時こそ上げるべきであり、施策を提示しなければならない」と話した。

山田俊男議員(参・比例)は「豚の輸出は形がないくらい少ない。議論されているチェックオフが形にならないか。その中で拠出金比率を75%の形を出しているが、前進していない。農家によっては1kg 当り50円と試算している。50円を拠出して、輸出対策をしっかりとやる仕組みとすればよい」と話した。

犬飼史郎飼料課長は「自給飼料は畜産から出る家畜糞尿との関係でもしっかりと取り組む必要がある。近年の温暖化などに対応する技術も導入しながら対応したい」と述べた。伏見啓二畜産振興課長は「チェックオフ制度は役所としてもサポートする体制を取っている。前提として、拠出金比率75%をとっていただく。現在はアンケート調査を行っており、年明けには結果を見て、要望確認に入るかの議論を行う」と述べた。

会合では最後に輸出検査を受けずに中国へ持ち出された牛受精卵、岐阜県における3例目の豚コレラについて説明された。

牛受精卵の持ち出しについては、熊谷法夫動物衛生課長が「ストローに入った状況で見つかった。密輸が未然に防げた。輸出には日本の証明書が必要になる。液体窒素の入った特徴的な容器で、持ち出された。今回は船での搬送で、貨物のチェックが全てで行われていない。税関や船舶会社などには注意喚起、同様の貨物があった場合は輸出できないこと、動検への情報提供を依頼している。また事実関係を確認した上で告発に向けて準備をしている。罰則は懲役3年以下または、罰金100万円以下となっている」と話した。

江藤拓議員(衆・宮崎2区)は「安倍総理も深刻に受け止めている。漁業法の改正で密漁では罰金が1,000万円以下に引き上げたことを伝えると、それくらいは当然。受精卵は日本の畜産にとって最も重要な知的財産だ」と述べた。

平野達男議員(参・岩手)は「受精卵の管理はどの様になっているのか。管理全体の仕組みに問題があるのかの検証が必要だ。簡単に持ち出せてしまう。システムの精査を行い、報告をお願いしたい」と述べた。

池田一樹消費安全局長は豚コレラについて「県の畜産研究所で3例目が確認された。ただちに殺処分に入っている。なぜ起きたのかを含め、調査チームを現地に送っている。調査結果を踏まえ、必要な改善措置を講じていきたい」と話した。

〈畜産日報 2018年12月6日付より〉