〈企業訪問〉明和食品、約20年前から無添加の食肉加工品を製造・販売
昭和48年創業の食肉加工メーカーの明和食品(堺市北区、辻尾正比呂社長)は、約20年前から化学調味料や保存料などの添加物不使用の食肉加工品の製造に取り組んでいる。現在、牛肉を100%使った無添加のハンバーグ、どて焼きなどが人気商品となっており、どて焼きは日本ギフト大賞2018で大阪賞を受賞した。ネットショップの飲食店向け「なにわ夕膳」、消費者向け「大阪の味ゆうぜん」を展開するほか、食材宅配サービス、百貨店の催事への出店などで商品を販売している。商品作りに対し、「無添加へのこだわりが1番だが、素材の味を生かすことも大事にしたい」と話す辻尾社長にインタビューした。
明和食品・辻尾正比呂社長
――無添加の食肉加工品の製造に取り組んだきっかけは。
創業してから添加物が入った商品を製造していたが、商品作りに添加物が本当に必要なのか疑問に感じ、約20年前から添加物不使用の取り組みを開始した。当初は市場から長期保存できる商品が求められることが多かったこともあり、取引先を失うなどの苦労もした。ただ、少しずつ無添加商品を求めるニーズが増えて顕在化してきたことから、約4年前から無添加商品の製造に重点を置いている。それまでは裏面表示上は無添加にできていたが、ワインの酸化防止剤など原材料に含まれる添加物もできるだけ使わないようにするため、原材料の入れ替えも行っている。
――主な販売チャネルや人気商品、製造時のこだわりについて。
業態別ではレストラン、喫茶店、ホテルなどがあり取引件数は約300件となっており、飲食店が半分を占める。このほか、ネットショッピング、生協などのチャネルもある。取引件数も徐々に増えており、新たな取引先からは「無添加の商品が良い」との声をいただいている。1番の人気商品はハンバーグで1日に約2t製造する。また、居酒屋・鉄板焼き店といった取引先からは湯煎するだけと使い勝手が良い、鉄板焼きとの相性が良いといった理由でどて焼きが人気を集めている。製造では無添加が一番のこだわりだが、極力シンプルなレシピにして素材の味を生かすことも大事にしている。
――社員教育や地域密着の取り組みについて。
相手(消費者)に喜んでもらうことを100%考えている状態がもの作りにはベストだと思っている。その環境作りをするために、まず自分たちが幸せであるためにはどうしたらいいのか。日常で良かった、ありがとうと思える瞬間をしっかりとキャッチしていければそういう気持ちに自然となるのではと考え、朝礼などで「ありがとう」と感じたことを全体の前で発表する取り組みを行っている。また、毎月第1土曜日に本社工場で2時間限定の還元直売会を開催している。原料肉のスライスやハンバーグなどを販売しており、毎回100人近い方が来られる。このほか、15年からは地元小学校の工場見学も受け入れるなどの取り組みを行っている。
―今後の展開は。
今はしっかりと商品のブラッシュアップなどを行い、足場を固める時期だと考えている。工場の生産能力の限界が見えてきているので、現在午後5時までの工場の稼働時間延長も検討している。また、将来的には本社近くで総菜店を出店することを計画している。工場から製造を移管して、総菜店のバックヤードで加熱商品の製造を行い、工場では非加熱商品を製造して、全体の生産性を上げていくことも視野に入れている。また、中長期的には総菜・外食分野をしっかりとおさえて、営業の強化を図っていきたいと考えている。
〈畜産日報 2019年3月26日付〉