「食肉産業展2019」で日本畜産物輸出促進協議会の植村理事が和牛輸出について講演
日本畜産物輸出促進協議会の植村光一郎理事(ミートコンパニオン常務取締役)は4月18日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれた「第44回食肉産業展2019」で「和牛の輸出戦略~ますます広がるマーケット~」と題して講演した。同協議会のメンバーとして、これまでアジアや欧州をはじめ、世界各国で実施してきた日本産和牛のプロモーション活動や市場調査について紹介するとともに、活動に携わってきた経験を踏まえ、和牛に対する海外の評価や意識の変化、輸出拡大への課題などについて述べたもの。
植村理事の講演によると、現在、海外市場では和牛の需要は着実に拡大しており、国の農産物輸出目標で2020年に牛肉が250億円の目標を掲げていることについて、「18年の牛肉輸出は247億円・3,560tと目標値の目前まで来ている。このままいけば、19年には目標としている250億円・4,000tを前倒しで達成する見通しだ」とした。また、18年の和牛去勢の肉質等級は「A5+A4」で78.4%と高い水準で推移しており、高級部位のロースなどを輸出することで価格を下支えしているという現状から、もはや国内だけで和牛の相場が成り立っているのではなく、海外市場でも相場が形成されるようになっていると述べた。
さらに、日本産和牛と外国産WAGYUの棲み分けについて、ブランディング強化の必要性を訴えた。各国での市場調査では、和牛統一マークの不正使用や類似マークが散見されたことや、展示会場やセミナーなどではトレーサビリティや品質についての正確かつ詳細な情報を求める声が多いことからも、さらなるブランディング強化の早期対応が急務であるとした。具体的な取組みとして、日本産和牛の品質情報提供システム(ラベリングシステム)を紹介。日本産和牛は1頭ごとの管理・トレースが可能で、新たにQRコードを用いた品質情報提供システムの開発により、海外の消費者などにその場で正確な情報提供する体制の構築を目指すという。
今後の課題としては、外国産WAGYUや他国産牛肉と価格での差別化を図るためには、日本産和牛の歴史、飼育環境といった生産工程の優位性についても、きちんとアピールしていくことが重要だとした。
これまで実施してきた海外プロモーションを紹介し、とくに印象に残ったものとして、米国、スイスでの活動に触れ、「米国では霜降りは好まれないと言われ不安を抱いていたが、実際にはマーブリング(A5)が芸術的だとし、味も『メルティ』だと高く評価してくれた。米国で認められたことで、世界にも通用すると確信が持てた」とした。スイスでは、「現地シェフからは、日本産和牛はキャビアやトリュフと同様に希少価値のあるもので、牛肉という概念ではなく和牛は『和牛』という価値を持ったものだと評価を受けた。和牛は牛肉のひとつではなく、『和牛』そのものであると認識したうえでプロモーションをやっていこうと、自信につなげることが出来た」と述べた。
〈畜産日報 2019年4月23日付〉