〈令和元年6月の需給展望 牛肉〉「父の日」は輸入メイン、和牛は苦戦、交雑は出荷減で高値
5月の枝肉相場は、中下旬に季節外れの猛暑で焼き材が売れたものの、例年通り連休明けで牛肉全体の消費が鈍ること、より安価な輸入牛肉にシフトしたことで和牛の各等級で下げた。ただ、交雑牛は和牛の代替需要と出荷減少により、30円前後上昇した。5月は真夏並みの暑さの中で、焼き材が好調、輸入牛肉の焼肉セットの販売が目立つ一方で、国産を中心に切り落としが失速した。
6月は、第3日曜日の16日が「父の日」でステーキ、焼肉などの販促が期待されるが、輸入牛肉が中心であり、和牛などの販売は低迷すると見込まれる。また、和牛A5を下支えしてきた輸出は、ロースなど高級部位が若干失速しているといわれ、ここまで極端な高値を維持していたA5クラスも弱含みと見込まれる。交雑種は、一定の需要がある中で、出荷が前年比で1割近く減る見通しであり、これ以上の高値は逆ザヤが拡大するため避けたいところだが、引き続き30~40円前後の上昇が見込まれる。このため6月の枝肉相場は、和去A5は2,700円前後、A3は2,200円前後、また交雑B2は1,600円前後とみられる。
19年5月の東京食肉市場の規格別の価格(生体、消費税8%込み)をみると、和去A5が前月比32円安の2,733円、A4は1円安の2,432円、A3は42円安の2,220円、交雑去勢B2は41円高の1,572円、乳去B2は9円高の1,097円となった。和牛は各等級で低下、特に2等級の下げが大きかった。交雑は不需要期入りでも上昇した。前年比でみると、和去A5が36円安と3カ月連続で前年割れとなった。ただ、A3は73円高、交雑B2は209円高と、依然として前年を大きく上回っている。
6月の生産見通しは農畜産業振興機構の予測によると、成牛の出荷頭数で2.5%減(1日当たりでは前年並み)の8万1,100頭が見込まれる。品種別の出荷頭数は、和牛は1.6%増の3万5,300頭、交雑種は12.1%減の1万7,800頭、乳用種は0.6%減の2万6,700頭が見込まれる。和牛は前年をわずかに上回るものの、交雑種の減少が1割を超える。また、同機構の牛のと畜頭数見込みによると、4月~9月の全品種のと畜頭数は和牛が増加も、交雑種、乳用種の減少で合計では前年同期比約2%減を見込む。品種別には、和牛は約2%増、交雑種は約7%減、乳用種は約2%減と、交雑種が大きく減少すると見込んでいる。これは、乳用種雌牛の頭数が減少する中で、後継乳用牛の生産を優先していることが要因となっている。
輸入牛肉(チルド)は同機構の予測では、5月の輸入量は8.0%減の2万2,900t、6月は0.2%減の2万3,400tで、5月は大型連休明けの需要減退で減少、6月はほぼ前年並みを見込んでいる。
6月月初の土日(1~2日)は、一部量販店でチラシにより和牛肩の薄切りが好調だったものの、一般的には和牛は苦戦し、輸入牛肉の焼肉セット、ハラミ、牛たんなどが売れた。6月の販売は、梅雨で消費自体は低迷も、今回は5回の土日があることで量販店では単月の物量は維持できる見込み。その中では、6月16日の「父の日」は年間で最も輸入牛肉が売れる日の一つであり、輸入牛肉は月間を通して一定数量の販売が期待される。その一方で、和牛は、高級部位をはじめ消費者の低価格志向が強まる中で販売は苦戦すると見込まれる。輸入牛肉については、豪州産、米国産だけではなく、TPP11で関税が下がったカナダ産も注目されており、数量は少ないものの、関税差を生かして平日の定番で販売し、輸入牛肉販売の底上げを図る量販店が出ている。
高値の和牛に代わり交雑牛の販売が広がってきたが、ここに来て出荷の減少幅が拡大、前述のようにこの先も約7%の減少が見込まれる中で、どう販売していくか難しくなっている。5月も連休明けの不需要期にも関わらず相場は上昇、6月は出荷が前年比で1割前後の減少が見込まれ、需要がこれまで通りならさらに相場が上昇し、逆ザヤが拡大せざるを得ない。販売の中心だった切り落としだけではなく、余り気味だったリブロースを(評価を下げたうえで)ステーキに活用するなどの動きがあるが、枝肉相場と店頭価格のギャップが拡大する中で、今後の動向が注目される。
例年通り梅雨入りで需要は縮小、ボーナス前で低価格志向もより強いことで輸入牛肉は一定程度動くももの和牛は苦戦、交雑牛は出荷頭数が大きく減少する見込みであり、これらを勘案すれば6月の相場は和去A5で2,700円前後、同A3は2,200円前後、交雑B2で1,600円前後、乳去B2は1,090円前後とみられる。
〈畜産日報 2019年6月7日付〉