MLA新社長ジェイソン・ストロング氏「日本は最重要市場であり続ける」、TPP11を牛肉消費回復の機会に
MLA豪州食肉家畜生産者事業団の新社長にジェイソン・ストロング氏が就任した(3月25日付)。ストロング社長はこのほど来日、6月19日には本紙らのインタビューを受けた。同氏は、国内外の市場で30年以上にわたり、農場から最終消費者に至るマーケティングでの経験、知識、関係者のつながりを持つ。農場での経験に加え、企業経営・業界経営、ビジネスの管理運営、サプライチェーンの開発、食肉科学と格付け、遺伝子関連とマーケティングで手腕を発揮し業界幹部として尊敬を集めている。
最初に、自身のプロフィールについて、「今回、牛肉・肉牛業界の代表に就いたが、MLA関連の仕事は3回目になる。過去にミートスタンダード・オーストラリア、MLAヨーロッパでの市場マーケティングに携わってきた。その中で生産から、小売に至るまで牛肉に関するサプライチェーンのすべてで経験を積んできた」と述べた。
その上で、TPP11発効後の現状について、「日本市場は長期にわたり、我々にとって最も重要な輸出市場だ。日本の消費者の皆さんにより良い品質で、より多く提供することに焦点を当ててきた。2年前に日豪EPAが発効、さらに今回、TPP11の発効となった。TPP11は長期間にわたり利益をもたらす機会ととらえている。我々は、消費者の皆さんにとって、他国産の牛肉と差別化していく面で多くのポイントがある。米国との差別化ではBSE問題の影響や、貿易の影響を受けやすいこと、それに加えて関税面で有利であることが挙げられる。その意味で関税はよい機会を与えたといえる。オージー・ビーフの良さは価格だけではない。市場でさまざまな分野で強みがある。現在、クイックサービスレストランから、ファインダイニングまで提供されている。価格面でだけではなく、品質面、トレーサビリティ、商品の一貫性でも市場で高く評価される。その中で、関税が低くなることで、より買い求めやすい価格で提供できることになる。2001年に、牛肉消費が落ち込んだが、TPP11は、この牛肉の消費回復の機会を与えたとも考えられる」と述べた。
今後の日本市場へのアプローチについては、「日本市場が最も重要な市場であることは、これからも同じ。その中で日本の消費の状況、市場の変化、消費者が何に関心を持っているか調べている。今回、来日してのミーティングでは、日本市場にどんなアプローチをすべきか、さまざまなセグメントがあるうち、それぞれにどんな戦略をとるか話し合った。消費者の食習慣がどう変わったのかを把握し、それぞれにアプローチしていきたい」と述べた。
その上で、「主要なプログラムに“レッツバービー!”サマープログラムがある。夏になると、日本で需要が拡大、一方で豪州にとってもこの時期は牛肉の供給余力が増える。ステーキ、グリル、BBQなど日本の消費者の考えも変わり、それに対応する形としている。日本市場の変化を理解しそれにどう対応したのか、ひとつの良い例だといえる。20年にわたりプロモーションに投資してきた。その一つが、ミートスタンダード・オーストラリアプログラムだ。高品質の商品を一貫して供給できる能力があることを関係者の皆さんに示してきた。パッケージを含め今回の厚切りステーキのプロモーションは、過去20年間の我々の投資の成果といえる」と、これまでの投資が現状のプロモーションに繋がっていることを強調した。
また、サステナビリティについて「消費者は、世界のどこから、どんな状況でその商品が来たのかという点にますます関心を持っている。その中で、豪州がこんな対応をしていると示していく。肉牛に気を配り、かつ効率的で利益の出るかたちでの牛肉生産を行っている。豪州はそうしたシステムを持っていることを示していく。これは非常に重要になる」と述べた。
〈畜産日報 2019年6月21日付〉