〈令和元年7月の受給展望 牛肉〉下旬は需要期入りも和牛は引き続き苦戦、交雑も下げ基調に

畜産日報 2019年7月5日付
〈和去A5は2,650円前後、A3は2,150円前後か〉
6月の牛枝肉相場は、不需要期に入り消費が縮小したものの、和牛の出荷頭数が概算で4%近く少なかったこと、さらに東京食肉市場では例年通り共励会、研究会が多く相場が下支えされたことで、5月に比べ和去A5で37円高、A3で15円高と当初の下げ予想に反しわずかな上昇となった。また量販店などで高値の和牛から需要がシフトしていた交雑種は、価格が上がりすぎたため今回は高値調整で下げに転じた。

なお、店頭での販売は、6月中下旬は首都圏で30℃近くまで気温が上がり、切り落としやスライスではなく、焼き材の販売が中心となった。また、大手量販店でアルゼンチン産牛肉を使った商品を期間限定で販売したり、関税の下がったカナダ産のフェアなどが行われるなど、輸入牛肉では、新規供給国、TPP11協定国による話題作りが目立った。

7月は、15日の「海の日」の3連休以降、夏の需要期に入る。しかし、足元では九州地方など西日本を中心に大雨が続き、牛肉をはじめ食肉消費全体への影響も懸念される。「海の日」以降の需要期については、焼き材、ステーキ商材が中心であり、国産よりも輸入牛肉の販売がメインとなる。7月下旬からは、旧盆需要に向けた手当てが入るものの、輸入に販売がシフトしていることもあって年々そのインパクトは小さくなり、単に旧盆休みの間の分を前倒しで手当てする状況になりつつある。なお、3日の相場は和去A5で2,636円、A3で2,184円と、6月平均価格に対しA5で134円、A3での51円それぞれ下げている。これらを勘案すれば、7月の枝肉相場は6月を下回ると見ざるを得ず、和去A5は2,600~2,700円、A3は2,150~2,200円、交雑B2も1,450~1,500円と見込まれる。

2019年7月の東京食肉市場の規格別の価格(生体、消費税8%込み)をみると、和去A5が前月比37円高の2,770円、A4は1円安の2,431円、A3は15円高の2,235円、交雑去勢B2は31円安の1,541円、乳去B2は13円安の1,084円となった。

和牛は、A4はほぼ前月並みも、A5、A3はわずかに上昇した。一方で、ここまで上昇が続いていた交雑B2は下げに転じた。前年比でみると、和去A5が31円安と4カ月連続で前年割れとなったが、A3は90円高、交雑B2は197円高と、下位等級で前年を大きく上回っている。

7月の生産見通しは農畜産業振興機構の予測によると、成牛の出荷頭数で0.7%増(1日当たりでは1.6%減)の9万5,600頭が見込まれる。品種別の出荷頭数は、和牛は5.3%増の4万5,100頭、交雑種は7.3%減の2万600頭、乳用種は0.1%減の2万8,500頭が見込まれる。和牛の増加が見込まれる一方で、交雑種の減少が見込まれる。

輸入牛肉(チルド)は同機構の予測では、6月の輸入量は2.8%増の2万4,100t、7月は0.9%減の2万5,700tを見込んでいる。

7月に入り月初の状況は、九州地域など西日本での豪雨、首都圏でも雨が続く中で消費はもう一つ盛り上がらない。来週以降は、民間企業のボーナス支給、15日の「海の日」の3連休などで夏の需要期に入る。その中で、焼肉、ステーキ、BBQ向け商材などの販促が期待される。

ただし、消費者の低価格志向は根強く、「ハレの日」向けの牛肉もより安価な商品へのシフトが続く。そのため、販売は季節的に、焼き材が中心だが、和牛・交雑など国産よりも、輸入牛肉での販促がメインになると想定される。実際に、店頭では輸入品を使ったバラ、ハラミ、牛タンなどの焼肉セットなどが目立つ。さらに、ホルスの高値により、国産での切り落としが作りづらくなり、その面でも輸入牛肉を活用する動きが出ている。

また、和牛の輸出は1~4月累計で90億8,100万円、前年同期比で27.9%増と好調だが、従来の高級品のロイン系主体から、他の部位・等級が求められる傾向も強まり、ここまで和去A5をけん引してきた輸出にも変化が出てきた。6月の東京食肉市場での和去の売買頭数は2,401頭、そのうち1,127頭がA5等級であり、全体の46.9%を占めることになる。銘柄牛は安定した引き合いがあるとしても、輸出の下支えが薄まる中で、いわゆる一般のA5には高値が付きづらくなっている。

交雑種については、機構の予測では7月の出荷頭数は7.3%減が見込まれ、この先も7%前後の減少が続くと見込まれる。ここまで和牛代替品として引き合いが強く、B2等級では昨年11月から1,500円台(3月のみ1,495円)を続けてきた。しかし、数量が限られ価格も割高となったことで量販店から敬遠される動きが出てきた。

これらを勘案すれば、7月中旬から需要期に入るものの、相場自体は和牛、交雑種、乳用種とも6月を下回ると見込まれ、和去A5で2,650円前後、同A3は2,150円前後、交雑B2で1,450円前後、乳去B2は1,050円前後とみられる。

〈畜産日報 2019年7月5日付〉