〈令和元年8月の需給展望 牛肉〉旧盆手当て入るが和牛上位は苦戦、交雑は高値離れ 和去A5は2650円前後、A3は2200円前後か
8月は、旧盆休みがほぼ1週間あることで、現状では手当て買いが入っているが、もともとこの時期は和牛など国産よりも輸入牛肉の焼き材が中心となることで月間相場が大きく上昇することは考えづらい。また、今年も極端な猛暑で、屋外でのBBQ需要は期待には届かないとみられる。地域的には、地方ではお盆需要で和牛などが動くものの、大都市圏では輸入牛肉を含め消費が伸びることは難しく、相場は7月並みと見込まれる。和去A5は、ロインなど高級部位の輸出需要に陰りがみられること、和牛の出荷は6%増が見込まれ、A5等級も多いと見込まれる中で、等級内での格差が広がっているため、平均相場では下げると見込まれる。このため8月の枝肉相場は、和去A5は2,650円前後、A3は2,200円前後、交雑B2は1,500円前後と見込まれる。
8月の東京食肉市場の規格別の価格(生体、消費税込み)をみると、和去A5が前月比17円安の2,753円、A4は16円安の2,415円、A3は15円安の2,220円、交雑去勢B2は12円安の1,529円、乳去B2は18円安の1,066円となった。主要等級は各等級とも小幅な下げとなった。本来需要期に入る時期だが、梅雨明けが長引き、明けた後は猛暑となり牛肉全体の消費が落ちたことが要因とみられる。前年比でみると、和去A5が81円安と5カ月連続で前年割れとなった。ただ、A3は54円高、交雑B2は177円高と、徐々に上げ幅は縮小も下位等級で前年を上回っている。
8月の生産見通しは農畜産業振興機構の予測によると、成牛の出荷頭数で前年同月比0.8%減(1日当たりでは1.1%減)の8万2,700頭が見込まれる。うち和牛は6.1%増の3万5,700頭、交雑種6.9%減の1万8,300頭、乳用種5.0%減の2万7,400頭が見込まれる。輸入牛肉(チルド)は同機構の予測では、7月の輸入量は2.8%減の2万5,200t、8月は1.4%減の2万5,900tを見込んでいる。
7月の販売状況は、首都圏(関東甲信)では梅雨明けが29日にずれ込み、その後は猛暑で消費は盛り上がらなかった。ある量販店では、梅雨の時期は、悪いなりにも焼き材が動いていたが、梅雨明けの猛暑でピタッと動かなくなったと話している。過去には、梅雨明け=需要期とのイメージがあったが、ここ数年の猛暑により、これが当てはまらなくなっている。ただ、枝肉相場は、3連休後に旧盆など需要期に向けた手当てが入り前半の不振から相場を押し上げた。しかし、前半の不振が大きく、前述のように各等級で6月の相場を下回った。また、天候だけではなく参議院選挙が行われたことで、外食、精肉の中元ギフトに一定程度影響が出たことも背景にあるとの指摘も聞かれる。
8月については、末端の売れ行きは猛暑の中で動かず、さらに首都圏の量販店にとって旧盆中は帰省や旅行などで人口が流失し例年売上は厳しい。逆にお盆明けは家庭の冷蔵庫の補充や、気温が下がれば牛肉の需要が戻ると期待される。その中で、この時期は輸入牛肉の販売が中心になり、バラやハラミ、牛タンの焼肉セットが売れる。また輸入牛肉では、関税面のメリットが出ているカナダビーフの平日定番化も見られる。一方で、国産では交雑の切り落とし、和牛の肩ロース焼肉・スライスなどの販売がみられる。量販店からは、交雑種は相場が高値に張り付き、特にモモ系が上がっていることで切り落としも作りづらいとの声が聞かれる。
一方、卸では、8月11日からほぼ1週間と畜が止まるため、駆け込み需要が入っており、バラ、三角バラ、ヒレ、肩ロースの価格が上昇しているという。しかし7月前半の荷動きからいきなり動き始めたことで、多くの卸では対応ができない状況といわれる。しかし、あくまでも連休中の手当てであり、月間でならせば消費が増えているわけではなく、連休後の下げ相場を勘案すれば7月並みの相場が見込まれる。また、和牛については、出荷が前年比で6%増と比較的多いこと、A5の比率が上がっていること、高級ロインの輸出需要にやや陰りがみられることで、バラ系は動くがロース、肩ロースがさばけないなど上位等級では上げ要因が見当たらない。
これらを勘案すれば、相場自体は交雑種、乳用種ともほぼ7月並み、和牛の上位等級はやや下げると見込まれ、和去A5で2,650円前後、同A3は2,200円前後、交雑B2で1,500円前後、乳去B2は1,070円前後とみられる。
〈畜産日報 2019年8月7日付〉