〈令和元年9月の需給展望 牛肉〉2回の連休に期待も需要拡大は限定的、和去A5は2,650円前後、A3は2,200円前後か

畜産日報 2019年9月4日付
8月の牛枝肉相場は、旧盆までの猛暑で焼き材などの消費が低調、旧盆明けは少し暑さが和らぐものの雨天が多く、消費回復には程遠い状況となった。和去A5は高級部位の輸出需要がひと段落したこともあり7月に比べ100円安となった。A3も同様に下げ、A5・A3とも今年最安値を記録した。当初は、下げ幅がもう少し広がるとの見方があったが、概算の出荷頭数が和牛で9%前後少なく、頭数減が相場を下支えしたといえる。

9月については、猛暑から解放され、2回の連休があり各量販店での販促が期待されるものの、10月1日からの消費増税を控え全体的に消費マインドが冷え込んでいることで過大な期待はできない。さらに和牛の出荷頭数が1割近い増加が見込まれることを勘案すれば、A5をはじめ和牛の各等級はほぼ8月並みにとどまるとみられる。一方で交雑種は、高値の和牛に対し底堅い需要があること、出荷頭数も引き続き減少することが見込まれることでわずかに上昇すると見込まれる。このため9月の枝肉相場は、和去A5は2,650円前後、A3は2,200円前後、交雑B2は1,550円前後と見込まれる。

2019年9月の東京食肉市場の規格別の価格(生体、消費税8%込み)をみると、和去A5が前月比100円安の2,653円、A4は39円安の2,376円、A3は45円安の2,175円、交雑去勢B2は7円高の1,536円、乳去B2は5円安の1,061円となった。高級部位の輸出需要が低下したことでA5等級が大きく下げたほか、多くの等級で下げた。一方で、交雑牛は、高値の和牛より安価な交雑への需要が強く、和牛が下げる中でも高値を継続している。

和去A5が6カ月連続で前年割れとなり、今年の最安値を付けた。また、前年比でみると、123円安と下げ幅が大きくなってきた。A4も70円安、A3は33円安と、各等級とも前年を下回った。ただ、交雑B2は147円高と、依然として前年を上回っている。

9月の生産見通しは農畜産業振興機構の予測によると、成牛の出荷頭数で前年同月比3.7%増(1日当たりでは0.7%減)の8万5,000頭が見込まれる。品種別の出荷頭数は、和牛は9.7%増の3万7,100頭、交雑種は1.4%減の1万9,000頭、乳用種は0.5%減の2万7,400頭が見込まれる。

輸入牛肉(チルド)は同機構の予測では、8月の輸入量は0.2%減の2万6,200t、9月は7.4%増の2万2,300tを見込んでいる。9月は前年に台風21号に伴い輸入量が少なかったことで前年を上回るが、7月後半からの売れ行き不振で在庫が多く、数量は2.2万tと抑えられる見通し。

8月の販売状況は、首都圏の中堅スーパーでは、前年に極端な猛暑で牛肉が売れなかった反動で前年を上回ったが、想定した売り上げには届かなかった。その中では、関税面でメリットの出たカナダ産は平日の定番化で好調、米国産、豪州産は焼き材などは不振でもある程度の数量は動いた。しかし、国産は価格訴求した切り落としのパック(380g入り本体1,000円など)は売れたものの、焼き材はじめ苦戦した。例年、この時期は東北など地方で和牛が動くものの、今年は地方、リゾート地とも荷動きはもう一つだった。

9月に入り涼しくなれば、和牛、交雑など国産は全体的に、スライス需要によりモモ、カタ系に引き合いが出てくる。消費増税前で消費マインドが冷え込んでいるなどマイナス面はあるものの、2回の連休(土曜日を含めれば3連休)があること、猛暑が収まりスタミナ回復へ牛肉需要が期待されることで期待は大きい。量販店では、輸入牛肉の販売とともに、和牛・交雑の販売に再度、力を入れることにしている。ある量販店では、交雑種モモを使ったステーキの販売を行う。高値の和牛が売りづらくなっていることで、数量は少ないが、比較的安価に国産牛のモモステーキを提供することで集客の目玉にする考え。

一方で、輸入牛肉は、7月後半の長梅雨以来、在庫を増やしている。8月中旬以降の入荷分は、手当てを絞っているものの、ここまでの在庫の積み増しで消化を急いでいることろだ。現状では、米国産のバラ、カタ系、豪州産のグラスなどで在庫が目立つ。その中で、日米貿易交渉が8月25日に大枠一致し、9月末の協定署名が見えてきた。そこで問題になるのが、米国産のバラ系のフローズン在庫だ。中国の旧正月に向けた買いが入り例年秋口に外貨が上昇するため、今期は外貨が安定している段階で早めの手当てを行い、米国産のバラなどフローズン牛肉の在庫を積み上げてきた。日米協定が発効すれば関税が大きく下がることになり、結果的にコスト高の在庫を抱える形になる。中国の手当てが入るかは、現状の米中貿易問題が解決されない中では不透明であり、ユーザーの目線が下がる中で在庫をどうするかが大きな課題になっている。フローズン在庫の消化を進める中で、チルフロでの販売も難しく、安価なチルドビーフが出回ることも想定される。

これらを勘案すれば9月相場は、交雑種は高値も、和牛はほぼ8月並みにとどまると見込まれ、和去A5で2,650円前後、同A3は2,200円前後、交雑B2で1,550円前後、乳去B2は1,070円前後とみられる。

〈畜産日報 2019年9月4日付〉