〈令和元年10月の需給展望 豚肉〉消費増税の痛税感と残暑続きで末端消費は厳しいか
9月は3連休が2回もあり行楽需要への期待もあったが、台風15号、17号などの自然災害もあり消費は振るわず。量販店では20日前後から棚替えが終わったものの、鍋物をするような陽気でもなく、動いたのはスソ物中心に小間切れや切り落とし、生姜焼き用などがメーンとなった。
豚枝肉相場は、気温低下に伴う出荷頭数の増加により、下旬にかけて税抜きで400円台前半まで下げると想定された。実際は、台風が出荷にも影響したことで、9月後半の枝相場も400円台後半を維持し、月間平均相場(東京市場、税抜き)は上物で512円(前年同月比37円高)、中物で487円(30円高)となり、3カ月ぶりに前年相場を上回った。10月は基本的に供給増・相場安の展開となりそうだが、今年は消費税増税による痛税感から、消費者の購買も価格志向が一段と強まり、ミンチを含めた安価な商材に需要が流れる可能性が高い。残暑が続いているため、月前半は鍋物需要も弱いとみられる。「即位礼正殿の儀」が行われ祝日となる22日も、消費の盛り上がりの期待は薄そうだ。こうした、相場の上げ要因は少ないが、豚コレラの広がりや予防的ワクチン接種の動きなど、状況次第では相場が跳ねる要素もはらんでいるため、先行き不透明な部分も多い。前月から値下がりするとみられるものの、月間では上物税抜きで470〜480円と400円台後半を維持するとみられる。
[供給見通し]
農水省が8月30日に発表した肉豚生産出荷予測によると、10月の出荷予測は前年同月比5%減の142万頭と見込まれている。過去5年平均比では1%少ない水準だ。22日は祝日の関係で休市のところが多く、21日稼働で1日当たりの出荷頭数は6万7,000頭弱と前年同月より平均で600頭少ない見通しだ。
一方、この夏場は猛暑の関係で薄脂や枝肉重量が乗らない豚もみられた。地域によってはその傾向がまだ見られるものの、気温低下に伴って、全体としての品質は概ね改善されているようだ。農畜産業振興機構の需給予測によると、10月の輸入チルド豚肉は、前年同月が台風による通関遅延の反動で輸入量が多かった反動で、前年同月比5.1%減の3万3,900tと予測している。
[需要見通し]
9月は学校給食も再開し、20日ごろには量販店の棚替えも一巡したが、前述の通り消費は振るわなかったもようだ。通常、台風など天候が悪いとかえって“買いだめ”で物量が動くといわれるが、今回の台風の猛威をみると、そうしたレベルではなくなっている。それ以前に昨年10月以降、精肉そのものの売上げも伸び悩んでおり、デリカなどにシフトしていると指摘されている。スライス系の需要が徐々に強まってくる方向だが、朝晩こそ過ごし易い気温になったにせよ、10月も全国的に暖かい空気に覆われやすく、気象庁によるととくに前半は気温が高い傾向になると指摘しており、今月前半は需要の過渡期が続くといえる。
さらに、消費増税前の駆け込み需要の反動で、消費者の財布の紐は一段と厳しくなっており、食肉の消費も単価の安い小間切れやミンチにシフトするとみられる。生鮮物のパーツの動きもバラ、カタロース、ウデの動きは堅調だが、ロースやモモについては一服感がみられる。
[価格見通し]
1日火曜日の東京市場の相場(上物)は、前市から57円上げの税抜き519円となった。1週目は3週間ぶりの5日稼働となり月初の手当ても入るため、曜日によっては税抜きで500円台前半の値を付けるとみられる。一方で、出荷頭数も本格的に回復してくるため、再び500円台を割ってくるともみられる。月間通しては9月のような大きな上げ下げはなく、平均では上物税抜きで470〜480円の展開と予想したいところ。だが、豚コレラのワクチン接種など、豚コレラ関連の動向が、枝肉市況にどのように影響するか、先行き不透明な部分も多い。
〈畜産日報 2019年10月2日付〉