日米貿易協定合意について全国知事会が緊急提言「国民生活にも影響」、TPP大綱の見直しなど要望

左=全国知事会・飯泉嘉門会長、右=農水省・伊東良高副大臣
〈徳島県は牛肉SG米国枠廃止や畜産クラスター事業の要件緩和を独自提言〉
全国知事会の飯泉嘉門会長(徳島県知事)は10月9日、農水省を訪れ伊東良高副大臣に日米貿易協定に係る緊急提言を行った。協定発効を見据え、「総合的なTPP等関連政策大綱」の見直しを行い、体質強化や経営安定、輸出拡大に向けて自由度の高い十分な予算の継続確保など、万全な措置を講じることを求めている。

協定内容や国内への影響及び今後の対応を説明し、生産体制の強化や輸出拡大に取り組む産地への支援拡充や、中小企業・小規模事業者の輸出促進などを通じた海外展開の拡大を含めた振興策の充実強化も要望している。

さらに、徳島県の政策提言として、日米貿易協定による牛肉のセーフガード(SG)枠の修正協議にあたり、「既存のTPPを越えない」という当初の共同声明に基づき、牛肉SG米国枠(24.2万t)の廃止を提言した。

そのほか、畜産クラスター計画に基づく取組みについては、ニーズが高い半面、採択要件のハードルが高く、経営規模拡大につながっていないと指摘し、施設整備の採択要件にある3年以内に法人化の期間を4~5年に拡大することを提言、地域の実情に応じた要件緩和を行い、意欲ある中規模畜産農家の規模拡大・生産性向上を支援することを求めた。さらに、生産コスト低減に向けた支援の充実強化も必要だとし、肉用素牛、乳用素牛の導入に対する支援メニュー新設や配合飼料価格安定制度の充実も求めた。儲かる畜産業として魅力を向上することが、担い手の確保、持続可能な経営に繋がるとした。

飯泉会長は「日米貿易協定は日本の農林水産業をはじめ各業界に大きな影響をもたらし、国民生活にも影響をもたらす可能性が高い」とし、畜産関連については、「TPPを超えないとされているが、SGではTPP12からTPP11になり、米国だけを別枠にして、TPP11と米国のSGを合わせてみたらTPP12を超えることがないように配慮していただきたい。畜産クラスター事業は要件が厳しい。中小企業・小規模事業者の多くは家族経営で、3年以内の法人化や、農業従事者の平均年齢が67歳弱のなかで45歳未満や後継者がいる必要があるなど条件は厳しい。中小企業・小規模事業者が希望を持てる形にしてほしい」と述べた。

伊東副大臣は「5年前からTPP対策をし、農家が意欲を失わず生産性を向上させ、所得を向上できるように取り組んできた。畜産クラスター事業は予算をかけて生産量の向上を図ってきた。現状では良い状態になってきた。しかし問題は、家族経営など中小規模の経営になる。後継者不足で廃業や、酪農・畜産では糞尿問題や環境問題、暑さ対策などもあり、本州での離農者が増えている。農水省でも対策として省力化機器導入などの事業に取り組んでいるが、離農の勢いが止まらないのが最大の関心事であり、対策をしていかなければならない」と応えた。

〈畜産日報 2019年10月10日付〉