体外受精卵を用いた「農大和牛」の研究成果を報告/東京農業大学総合研究所

農大和牛「やよい」(牧草肥育)
東京農業大学総合研究所は12月18日、東京都千代田区の丸ビルホール&コンファレンススクエアで「革新的技術研究 成果報告会」を開催した。その後の情報交換会では、2016~2018年度の総研プロジェクト「農大ブランドによる地方創生を目指した6次産業化プロジェクト」として取り組んでいる「農大和牛」の研究成果を報告した。

会場では、農学部動物科学科の岩田尚孝教授と研究室学生たちが生産した「農大和牛」が初めて披露され、ローストビーフの試食が提供された。

農大和牛は、現在、和牛生産の一角を担っている体外受精卵(体外胚)を用いて生産されたもの。受精卵の作成には肉質に強い影響力がある黒毛和種から卵子を、粗放な環境で育った褐毛和種から精子を用いている。赤身の多い褐毛和種と従来の黒毛和種を組み合わせた農大和牛「赤黒牛」には、高い国産粗飼料の利用能力、健康的な赤身と霜降りの絶妙なバランスが期待できるという。

岩田教授は、「現在、黒毛和種は日本の農産物にとって重要な武器となっている。黒毛和種はサシが特徴であり、穀物主体で肥育し、運動量を抑制して大きくすることでサシが入る。一方で、牛は本来、牧草を食べて胃袋の中で微生物によって分解・消化して生きている。しかし、日本では牧草牛が主流となっていない。牧草を食べ、国産のエサを給餌し、健康的な赤身を持つ、といった大事な武器が揃っている和牛に対して、高い値段である地位が与えられていないのが現状だ」と説明した上で、「農大和牛はそういった部分に対しての提案をしていきたい。受精卵からつくっており、卵子には肉質の良い黒毛和種、精子には草を食べて大きくなることに優れた熊本の褐毛和種を使用した。そのため、半分が黒毛で半分が赤毛の和牛となる。今回、『赤黒牛』と名付け、2卵移植することで黒毛、赤毛の双子(形質は同じ)が生まれた。どんな飼育方法、肉質にしたら皆様に喜んでもらえるか知りたかったので、一方は従来通りの黒毛和種の飼育方法である穀物肥育、もう一方は牧草肥育と2つの飼養条件で肥育を行った。ぜひ、両方を食べていただき、あか牛の赤身のおいしさがどのくらい舌に合うのか、教えていただきたい。次の子牛に対しては、意見を参考に、牧草肥育が良いのか、若干穀物を与えた方が良いのかを固定して肥育していきたい」と、参加者たちに意見を求めた。

会場では、研究室学生たちが名付けた「やよい」(牧草肥育)、「まちこ」(穀物肥育)それぞれのローストビーフが振る舞われ、食べ比べてもらった上で、アンケートで意見・感想を募っていた。

〈畜産日報 2019年12月23日付〉