第3回「和牛甲子園」に17県30校の“高校牛児”が集結、鹿児島県立市来高校が総合部門で最優秀賞
JA全農が主催する、第3回和牛甲子園が東京・品川の東京食肉市場、品川グランドホールで1月16~17日に開催され、鹿児島県立市来農芸高等学校が総合部門で最優秀賞に輝いた。第3回大会となる今回は、全国17県・30校から“高校牛児”が集まり、共励会には44頭が出品された。
和牛甲子園は全国の農業高校で肥育された和牛を対象に、農業高校の生徒を集めて和牛肥育体験発表会、和牛枝肉共励会を開催し、将来の畜産業の後継者たる高校生に情報交換・交流の場を提供し、肥育技術と生産意欲向上を図り、日本の農業後継者・担い手を育成するもの。共励会に先立ち16日に体験発表会が開催され、総合部門最優秀賞に輝いた、市来農芸高校が「牛から学ぶかけがえのない青春」と題した発表で最優秀賞を獲得した。
総合部門で最優秀賞を獲得した、市来高校の生徒たちは「昨年の大会では優秀賞で、悔しい思いをした。今回は総合で最優秀賞を取れた。飼養管理ではアニマルウェルフェアに取り組んでいるが、恒久的に取り組んでいる。枝肉はいつもと違う美しさがあった。皮下脂肪が若干多かったので、日ごろから気を付けて管理していく必要があると感じた」と最優秀賞獲得を喜んだ。また牛から学んだことについては「毎日の飼養管理は簡単なことでなく、命の大切さなどを学び、感謝の気持ちでいっぱいです」と話した。来年は枝肉部門でも最優秀賞を目指したいと意欲を示した。
17日の共励会の最優秀賞は、岩手県立水沢農業高校の出品牛(去勢A5、32カ月齢、BMS12)で、(株)ふじなわが単価4,001円(税抜)で購入した。市来高校の出品牛(牝A5、30カ月齢、BMS12)は優良賞で、JA全農ミートフーズが単価2,804円で購入した。市来高校は発表会の得点が44点(50点満点)、共励会での得点が46点を獲得し、総合90点を獲得し総合部門で最優秀賞に輝いた。
共励会後には褒章式が行われ、主催者を代表してJA全農の齊藤良樹常務理事が「発表会では牛飼いにかける熱い思いに圧倒され、枝肉審査ではプロの農家顔負けの技術レベルに驚かされた。TPP11、日EU・EPAに続き、日米貿易協定が発効されるなど、日本の畜産を取り巻く環境は大きく変化した。一方で、米国向け牛肉輸出低関税枠拡大や対中輸出再開に向けた動きなど、和牛に対して世界から注目が集まっている。若者の創意工夫と熱意をもってすれば、必ず道は開けると確信した。和牛甲子園を通じて得た全国の高校牛児との熱い絆を基に切磋琢磨し、これからの畜産業界を盛り上げてほしい」とあいさつした。
審査講評では、枝肉審査委員長を務めた日本食肉格付協会の小林淳二業務部長が「和牛甲子園は枝肉成績だけを競うのはなく、将来の農業の後継者育成、高校生同士のネットワーク創出を目的としている。15県・28校から44頭の出品となった。年々参加校が増えている。名実ともに全国大会と言える」と述べた。
続けて、「共励会では去勢が30頭、牝が14頭となった。和去の枝肉重量は全国平均を40kg 上回る、546kgだった。牛が健康に育った証になる。ロース芯の最大は100平方センチメートルで平均は69平方センチメートルだった。まずは65平方センチメートルを目標に努力してほしい。バラの厚さは最大9.8cm、平均8.5cm だった。まずは8cm を目指してほしい。皮下脂肪は厚すぎず、薄すぎないことが重要になる。去勢では、BMSは平均9.8となった。血統の能力を十分に引き出している。愛情をもって育てた結果が表れている。最近はオレイン酸値が注目されているが、共励会平均では53%だった。オレイン酸値はおいしさの指標となる。牝では枝肉重量をいかに付けるかが課題になる。牝は大きくすると皮下脂肪が増える傾向があり、留意が必要になる」と評した。
〈畜産日報 2020年1月21日付〉