〈令和2年5月の需給展望 牛肉〉上げ材料乏しく、和牛上位等級ほど下げ相場に
新型コロナウイルス感染症の影響で2月から外食中心に大きく低迷している牛肉の末端需要だが、外出自粛が続くなか、この春の大型連休中の量販店では切り落とし中心にまずまずの売れ行きとなった。相場下落で、ホルス中心に売価を下げた背景もあり、地域に関わらず、政策として従来から国産牛の販売に力を入れてきた企業では昨対で2ケタ増以上の実績を上げたところも多いようだ。
「年末の繁忙期が2カ月も続いている雰囲気」(関西の問屋筋)、「忙しくて店舗の人手が足りなく、手切りの作業ができないようだ」(関東の卸筋)といった声も聞かれる。とはいえ、やはり動いている部位はウデ・モモなどスソ物が中心で、一部でホルスのロースも切り落としで扱うケースもあるようだ。ただ、専ら焼き肉店やホテル関係で使用される和牛ロイン系やバラ系の動きは低調で、引続きロイン系は在庫圧迫となっている。
例年、5月の大型連休後は消費が落ち込む時期のため、枝肉相場は弱気に転じ、6月から7月の梅雨期の相場低迷期へとつながっていくものとみられる。仮に緊急事態宣言が一部解除されて営業を再開する外食店舗が増えたとしても、外出自粛ムードは続くため、引続き安価な部位など家庭内需要中心の展開となりそう。
このため、5月の牛枝肉相場も、モノによって高値安値の差が激しいなか、大型連休後の補充買いが一巡した後は和牛の上位等級中心に下げ基調が続くとみられる。ただ、新型コロナによる工場閉鎖で中旬以降、北米産チルドの供給量が減少する流れのため、代替でホルスへの引合いが強まる可能性もある。
〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、5月の成牛出荷頭数は前年同月比2.4%減の7万8,800頭、このうち和牛が3万5,400頭(同2.2%増)、交雑1万1,900頭(同4.9%減)、乳用種2万4,300頭(同6.7%減)となっている。また、チルド牛肉の輸入量は2万1,800t(同5.6%減)、フローズンは前年が少なかった反動で2万5,600t(同0.8%増)と見込んでいる。つまり、ホルスや輸入チルドなど安価な商材ほど供給量は少ない見通しだ。例年であれば不需要期の相場下落を避けるため、出荷控えもあるが、今年は東京オリパラも延期となり、依然、先行きも不透明のため、むしろ現金化のために頭数が出てくるものとみられる。
〈需要見通し〉
引続き外食向けは厳しく、家庭内消費で需要の底上げを期待するしかない状況だ。ただ、量販店で扱われる商品はスソ物など限定的で、ひき材用のスネや、ウデ・モモの切り落とし用中心の展開となりそうだ。消費者の生活不安が強まるなかで、食費への支出が増えており、和牛・交雑中心にロース、ヒレ、バラはさらに需要が低迷する可能性がある。輸出も含めて先行きが不透明のため、凍結回しよりも価格対応で消化する動きとなりそうだ。
〈価格見通し〉
4月の枝肉相場は、大型連休による休市が多いため最終週には持ち直したが、月間平均では和牛上位等級を中心に予想よりも安値となった。5月は上げ材料が乏しく、とくに出荷増が予想される和牛は、5等級、4等級物の下げが大きく、3等級以下のものは小幅な下げにとどまりそう。交雑種は頭数次第だが、3等級以下やホルスは小確りした展開が予想される。このため、和去A5で1,900円前後、A3で1,400円前後、交雑B2で1,000円前後、乳雄B2は970円前後で、全体的に2~4月に比べると下げ足はやや弱まるとみられる。
〈畜産日報2020年5月13日付〉