〈令和2年7月の需給展望 鶏肉〉家庭食需要増で生鮮各アイテム順調に消化、凍結品は品薄
6月の鶏肉需給は、新たな生活様式の下、外食需要の低迷が続き、輸入鶏肉にとっては引き続き厳しかった。一方で国産品は、一時期程の買いだめ需要は弱まったが、家庭食需要を背景に、価格優位性の高い鶏肉は安定した相場展開となった。
梅雨入り、気温が高くなるにつれ、モモの需要は緩んだものの、例年と比べ高値を維持している。ムネは根強い需要に支えられ日々の上下はあるものの、高止まり。手羽先・元に関しても、調味料メーカーのテレビCM効果もあり、瞬間的には品薄状態となった。生鮮各アイテムが順調に消化されているため、凍結各アイテムは品薄。本来であれば、鶏肉相場が緩むこの時期に凍結玉を確保するが、ことしは相場見通しが難しく、凍結玉の確保が進んでいない。
6月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが610円(前年561円)、ムネが257円(226円)となり、ともに前年を上回り、正肉合計では80円上回っている。前月比ではほぼ横ばいとなったが、前年比では5月は正肉合計で55円高、6月はさらに前年を上回り、例年より需要が強いことが伺える。とくにムネは昨年比で1割以上高値となっている。
〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラーの生産・処理動向調査によると、6月の生体処理羽数は前年同月比4.7%増と予測。処理重量も2.0%増と羽数・重量ともに前年を上回る見通し。7月以降も羽数・重量ともに前年並か若干上回ると見られ、今後も安定した供給が続くと見られる。
主要産地では、北海道・東北地区の6月の処理羽数は4.3%増、重量は0.4%減と予測、7月の羽数は3.2%増、重量は0.2%増と予測しており、概ね前年水準は維持すると見られる。南九州地区(宮崎、鹿児島、沖縄)の6月の処理羽数は6.6%増、重量は4.7%増と前年を上回る予測だが、7月の羽数は2.2%増も、重量は0.8%減とわずかに前年を下回る見通しとなっている。
農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば、7月の国内生産数は13万tで前年同月比2.5%減と見込む。6月までは前年同月を若干上回る水準で推移していたが、7月は下回ると予測している。それでも5~7月の3カ月平均では1.3%増を見込んでいる。
一方で輸入品は、在庫水準が高いなか、6月はタイからの輸入量が前年同月を上回る見込みのため、全体でも前年同月を上回ると予測している、しかし7月は前年7月のブラジルからの輸入量が多かった反動で、7.9%減と予測。そのため、5~7月の3カ月平均でも5.8%減となる見通し。ブラジルでは出来高は安定しているが、処理場の稼働率低下により日本向け規格は減産するとの声も聞かれる。
〈需要見通し〉
国産生鮮は各アイテムとも、引き続き量販店需要に支えられると見られる。今夏は平年よりも暑くなると見られ、ムネの需要はさらに強まる可能性も。それでもムネは高止まりとみられ、これ以上の上げは難しいか。一方でモモは暑さが厳しくなるにつれ、緩むことになるが、極端な需要減退は考えにくく、供給状況によってはもちあいとなる可能性も。一方で輸入品は、外食産業が低迷している限りは厳しい状況と言わざるを得ない。輸入量も一定水準を保っているため、相場を押し上げることは困難か。
〈価格見通し〉
国産生鮮モモは6月中旬以降弱含んだが、600円台を維持。7月はジリ下げと予測されるが、月末に590円台に突入し、月間平均では600円前後、ムネは255円前後の高値を維持しており、引き続き需要が強いことから、6月並の255円前後と予測する。農水省市況ではモモが620円、ムネが275円前後と見込まれる。
〈畜産日報2020年7月6日付〉