〈令和2年8月の需給展望 豚肉〉税抜き600円でスタート、月前半は強め推移か

〈月平均で税抜き570~580円、猛暑による出荷への影響懸念〉
通常であれば7月後半は、需要が落ち込むなか、梅雨明け後の猛暑で出荷頭数が減ることで豚価が下支えされるケースとなる。だが、今年は例年以上に梅雨明けが遅れたことで梅雨寒で成育状態も良く、また、同月は輸入チルドの供給不安から量販店などでも国産で販促を組むケースが多くみられ、末端需要も堅調に推移した。結果、同月の東京市場の月間平均は上物税抜きで594円と前年同月を70円以上回る高値相場となった。

8月3日の東京市場は上物税抜き600円(税込み648円)でスタートした。需要面では、全国的に新型コロナウイルスの感染者数が再び増加傾向にあるなか、盆休み期間中も自粛ムードの高まりから焼き肉やバーベキューなど夏の行楽需要への期待は薄い。その半面、移動制限などが発令された場合には、量販店を中心に需要が盛り上がる可能性があり、需要動向は不透明感が強い。

供給面では梅雨明けが遅れたことに伴い、今後、猛暑による餌の食い込み低下や生育悪化などで出荷は予想よりも伸びてこない可能性もある。出荷が潤沢といえないなかで、8月も相場の下げ要因は少なく、月間平均では上物税抜きで570~580円(税込み620~630円)程度と予想する。

〈供給動向〉
農水省が7月17日に公表した肉豚出荷予測によると、8月の全国出荷頭数は前年同月比1%増の127万5,000頭と予想している。前年比ではわずかな増加を見込むものの、引き続き130万頭を割る見込みだ。

農畜産業振興機構の豚肉需給予測では、8月の豚肉生産量は同2.2%増の6万9,200tと予想している。前年を上回る予想だが、今後は梅雨明け後の全国的な猛暑続きが予想され、餌の食い込みが低下し増体悪化による出荷減が懸念される。

機構の需給予測では、8月のチルド豚肉の輸入量は、前年同月比7.4%減の3万3,100tとしている。昨対比でみると、新型コロナの拡大に伴う北米の現地工場の減産などの影響から「かなりの程度下回る」としているが、稼働率回復で徐々に供給面が回復しつつあり、7月からは2,000t多い、3万t台半ばのボリュームになる見通しだ。

〈需要見通し〉
7月の末端消費は上述の通り、輸入チルドが供給不安だったこともあり、量販店では国産を中心に販促を組むケースが多く、「海の日」「スポーツの日」を含む4連休の荷動きも堅調に推移した。8月は例年、盆休みにかけて都市人口が減少するため、都市部での需要は伸び悩む傾向にある。しかし、今年は新型コロナの影響で旅行や帰省を控える動きが予想され、基本的に家庭内消費に支えられて、需要は堅調に推移するものとみられる。

パーツの動きも月替わりとなる7月最終週から、全体的にそれなりに動いている状況だ。ロース、バラは企業によってマチマチながらも、カタロース、ヒレ、スペアリブの動きは良い。一方で学校給食がストップすることで、モモ、ウデの荷動きは弱まっている。

輸入チルドの動向も気になるところだが、北米を中心に現地工場の稼働率や生産量は徐々に回復している。現地コスト高の影響を受けた現物に対し、コストが低下した玉が入荷してきており、盆明け以降はある程度のボリュームが輸入されることが予想される。そのため、経済不安と相まって消費者の財布の紐がより一層堅くなる月後半は、需要が輸入チルドにシフトしていく可能性も考えられる。

〈価格見通し〉
8月の豚枝肉相場は、末端消費と出荷の不透明さが相場にどう反映してくるか、予想が難しい。例年とは異なる消費動向となることは間違いないが、現状、8月の相場は、盆休み前の手当てが強まる来週にかけて600円前後と強めに推移し、盆明け以降、徐々に下げてくるものとみられる。このため、月間の平均相場(東京市場)は、上物税抜きで570~580円(税込み620~630円)と、引き続き前年を大きく上回る相場展開になることが予想される。
〈畜産日報2020年8月4日付〉