〈令和2年9月の需給展望 鶏肉〉酷暑により一部で増体遅れも、安定した供給体制を維持
8月の鶏肉需給は、国産生鮮品は末端需要が堅調に推移した。梅雨明けが例年より遅く、暑さも厳しくなったこともあり、モモ需要はこの数カ月と比べ弱まったが、相場は依然として高値で推移した。
ムネは加工筋での安定した需要と好調な末端消費が重なり、この数カ月ジリ上げ展開が続く。国産生鮮は盆を境に需要が落ち着くのではとの声も聞かれたが、それなりの引合いがありもちあいとなった。
モモは高値が続くことで、好調な年末消費を見越した凍結玉確保が遅れていたが、ここにきて凍結作業が進んでいるようだ。酷暑で増体が進まない産地も見られるが、供給体制に影響は出ていない。
一方で輸入品は、帰省や旅行自粛などもあり外食産業の需要回復が進まず苦戦が続く。需要が大きく減退しているが、一定の輸入量が続いているため、国内在庫は依然高いレベルにある。
8月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが597円(前年535円)、ムネが273円(225円)と、ともに前年を上回り、正肉合計では110円上回っている。前年比では5月が55円高、6月が80円高、7月が95円高と昨対比高の幅が拡大している。前月比ではモモは横バイで、ムネは11円高となった。
〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラーの生産・処理動向調査によると、8月の生体処理羽数は前年同月比1.1%減と予測。処理重量も0.9%減と羽数、重量ともに前年を1%程度下回る予測だ。ことしは梅雨明けが遅く、酷暑となったことで生育に影響がでたようだ。9月の生体処理羽数は4.4%増、重量も4.9%増と予測しており、再び安定した供給体制が続くものとみられる。
主要産地では、北海道・東北地区の8月の処理羽数は2.2%減、重量は1.4%減といずれも減少予測。9月は羽数が4.9%増、重量が5.8%増と改善を見込んでいる。10月は羽数・重量ともに前年並を予測している。南九州地区(宮崎、鹿児島、沖縄)の8月の処理羽数は0.3%増、重量は0.1%減とほぼ前年並の見通しで、9月は羽数が5.6%増、重量も5.6%増と前年を上回る予測となっている。10月も羽数3.2%増、重量3.3%増を予測している。
農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば9月の国産生産量は13.1万tで前年同月比1.2%増を見込む。8月は0.8%増の13.1万t予測だが、7月が3.5%減の13.2万t見込みのため、7~9月の3カ月平均では0.5%減と予測している。13万t前後の安定した供給体制が維持されている。輸入品は国内在庫水準が依然として高いが、8月の輸入量は11.1%減の4.5万t、9月は15.3%減の4.5万tと予測しており、7~9月の3カ月平均では11.8%減の4.6万tと予測しており、輸入量が1割以上減少することで、国内在庫の漸減が期待される。
〈需要見通し〉
国産生鮮品はコロナ禍においては、引続き強い末端需要に支えられる。ことしは残暑が厳しいため、ムネの需要がしばらく続きそうだ。暑さにも関わらずモモの荷動きも堅調なため、モモ・ムネともに安定した需要に支えられる。さらに家庭食需要が定着しているため、手羽元・手羽先などの副産物の引合いもそれなりに期待できる。輸入品は輸入量が減少したことで、国内在庫は減少に転じていくが、外食産業が回復しておらず、需要が回復しているとは言えない。そのため相場も底値推移が続くと見られる。
〈価格見通し〉
例年であればモモは8月が底値となるが、ことしは前月から横ばい推移となり高値を維持した。9月も高値を維持し、若干の上げと見られ、日経加重平均でモモは605円前後、ムネはもちあい展開で270円前後と予測する。農水省市況では、モモが625円前後、ムネが290円前後と見込まれる。
〈畜産日報2020年9月4日付〉