〈令和2年10月の需給展望 牛肉〉年末に向けた手当ての動き強まる、後半も基調を維持するか
9月は当初懸念されていた残暑も彼岸を境に気温が下がり、量販店の棚割りもスライス物中心に変わり、本格的な鍋物シーズンが到来した。盆休み明け以降厳しかった外食需要も、4連休で人の出足が増えたことで、とくに焼肉業態などはやや客足が戻ったようだ。
パーツでは和牛2~3等級を中心にカタロースやウデ・モモなどスソ物の引合いが後半にかけて強まったものの、ヒレ、ロースの動きは依然として重く、やはり高級店を中心とした外食需要の弱さが伺えた。ただ、枝肉相場は4連休明け以降、年末に向けた手当の動きが本格化し、東京食肉市場でも和牛A3では月末には月初から200円も値上がりしている。
10月は基本的にスライス物中心の需要となるが、あいにく祝日などイベントがない。今月からの「Go To トラベル」の東京追加、「Go To Eat」キャンペーンに期待したいところだが、牛肉需要をどこまで押し上げるかは不透明といえる。
一方で、10月前半は年末に向けた在庫手当ての動きから、枝肉相場は強含むとみられる。ただ、この先11月から12月にかけての和牛の出荷も多いとみられるため、すでにパーツ単位では逆ザヤにあるなかで前半の勢いが後半まで継続するかが注目されるところ。和牛去勢A5で2,480円前後、同A3で1,950円程度、交雑去勢B2で1,190円程度、乳雄(搬入)950円前後と予想される。
〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、10月の成牛出荷頭数は和牛が4万100頭(前年同月比3.7%増)、交雑が1万9,800頭(同1.6%減)、乳用種が3万頭(同2.4%減)としている。輸入品はチルドが2万1,400t(同15.9%減)、フローズンが2万6,600t(10.9%減)と大幅に減少する見通しだ。
個体識別情報からみても、黒毛和種は11月から12月にかけても前年より1~2%多いと予想される。乳雄は、10月の出荷は前年よりも3%ほど少ないとみられるなか、豪州産チルドが現地生産量の減少と通関遅れの影響で市中在庫がひっ迫しており、モモなど赤身系の引合いが強まる可能性もある。
〈需要見通し〉
すでに量販店の棚割りはスライス物・切り落とし中心となっており、懸念されていた白菜などの葉物野菜も前年よりも値上がりしているものの、高値のピークを脱した感がある。週末の気温次第ではスライス系の動きが強まることが期待される。関東・関西ともに量販店からの発注が増えて肩ロース・クラシタの在庫は薄くなっており、モモなど赤身系の引合いも強くなっている。
ただ、ヒレの動きは厳しく、ロースも重い。焼き材のバラの動きも弱まってきているものの、凍結向け、加工向けの動きが継続しているもようだ。さらに、月前半は年末に向けた手当ての動きも活発とみられる。各問屋筋はすでに夏場に先決めして、凍結玉を仕込んでいるところ。とくに今年の場合、「和牛肉保管在庫支援緊急対策事業」の対象となる和牛肉は、営業倉庫に1カ月以上冷凍保管されていることが要件のため、例年よりも早めに手当ての動きが出ているもようだ。
〈価格見通し〉
9月の枝肉相場(東京市場)は、下旬に和牛2~3等級を中心に値上がりしたことで、和牛は各等級で前月から値上がりした半面、交雑、乳雄は一段下げとなった。10月は年末の手当てなどから和牛中心に強含むとみられる。和牛去勢A5で2,480円前後、同A4で2,120円前後、同A3で1,950円程度、交雑去勢B3で1,340円前後、同B2で1,190円程度、乳雄950円前後と予想される。ただ、年末向けの手当てが一巡すると、より実需を反映したものとなり、月後半には相場がダレる可能性も高い。
〈畜産日報2020年10月2日付〉