〈令和2年11月の需給展望 鶏肉〉国産生鮮は堅調推移、最需要期に向け相場は上昇基調
10月の鶏肉需給は、引き続き国産生鮮は末端需要が堅調に推移し、局所的に品薄感も見られた。とくにモモは8月を底値に上昇基調にあり、ムネも4月を底値に上昇が続く。コロナ禍で内食需要が旺盛で、価格優位性の高い鶏肉は量販店で特売を実施しなくても安定して売れているようだ。内食需要により、正肉に限らず手羽先や手羽元も家庭内調理時間を確保しやすくなったことなどもあり、強い引き合いが続く。
生産面では8月の酷暑の影響で産地によっては増体不良が見られるが、全体の供給量を勘案すれば、相場が急騰するほどではないようだ。ただ、今後は注視する必要もある。
輸入品は10月からGoToEatキャンペーンが開始されたことで、居酒屋チェーンをはじめ外食需要が刺激された。そのため、荷動きは改善されたようだ。10月後半には相場が反転し底値を脱し、今後も外食需要が継続して改善されることでジリ上げ展開が期待される。
10月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが632円(前年557円)、ムネが292円(254円)と、前年を大きく上回っている。正肉合計では前年を113円上回っている。前月比ではモモが22円高、11円高となった。
〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラーの生産・処理動向調査によると、10月の生体処理羽数は前年同月比2.2%増、処理重量は1.6%増と予測。一方で11月の処理羽数は1.8%減、処理重量は2.5%減とともに減少を見込む。酷暑となった今夏に導入された鶏で、体重が乗らなかったようだ。12月は処理羽数1.4%増、処理重量0.3%増と昨対増を見込んでいる。結果2020年は通年では処理羽数は2.4%増、処理重量は1.8%増と生産体制は着実に拡大を続けている。
地区別では北海道・東北地区の11月の処理羽数は0.5%減、処理重量は1.3%減といずれも微減予測。南九州地区(宮崎、鹿児島、沖縄)では、処理羽数2.8%減、処理重量3.6%減を見込んでおり、九州での減少が目立つ。
農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば11月の国産生産量は14.1万tと前年同月比1.3%減を見込み、前月比では4,800t減を見込んでいる。それでも、9~11月の3カ月平均では14万t・0.8%増と予測している。
輸入品は、新型コロナウイルスの感染拡大が見られて以降、輸入量を絞る動きが見られ、8月以降は昨対比1~2割減となり、国内輸入品在庫も微減傾向にある。11月の輸入量は4.4万t・10.7%減と予測し、8月以降は4.0~4.5万tの輸入量が続く。今後は外食産業の回復、需要に連動した国内在庫の適正化が進むことで、輸入量も増加するものとみられるが、新型コロナウイルス感染症が終息するまでは、コロナ以前の水準は望めない。
〈需要見通し〉
国産生鮮は朝晩の冷え込みもあり、強力な量販店需要に支えられる。野菜価格の安定もあり、モモは鍋物需要が期待される。ムネも価格優位性や、健康訴求の高まりから安定した引き合いが期待される。手羽系アイテムも、煮込みなどの家庭内調理が期待されることで、引き合いが期待される。
輸入品もGoToEatキャンペーンが始まり、11月には本格的に食事券事業が開始されるため、外食需要が刺激されることで、消費拡大が期待される。また国産品の供給状況によっては一部で輸入品への切り替えも期待される。
〈価格見通し〉
国産生鮮モモは、年末の最需要期に向け一服することなく強気推移が予想される。ムネの需要も安定して強いが、損益を勘案すると横ばい推移か。そのため、日経加重月間平均では、モモが650円前後、ムネが295円前後と予測する。農水省市況では、670円前後、ムネは325円前後と見込まれる。
〈畜産日報2020年11月9日付〉