年明けのブラジル産鶏肉のオファー強気、不安要素多く、価格交渉は一層慎重に
日本国内では国産物が不足しているものの、輸入品は新型コロナウイルスの新規感染者数の増加で先月下旬から外食需要が再び減速し、荷動きが鈍化している状況だ。年明けから年度末にかけて不安要素が多く、決算期も控えるため、提示価格での契約は慎重だ。輸入各社も年度末から春先の需要を見極めながら一層慎重に交渉に臨んでいる。
関係筋によると、このほど提示された2021年1~2月積みBLのファーストオファーは1t当たり2,000ドル程度。昨年は中国の需要急増や生産量の減少予想から12月~1月積みはファーストの段階で2,400~2,500ドルまで高騰していたが、その後、新型コロナによる日本国内の需要低迷もあり、この夏には1,800ドル程度まで値下がりしていた。
ところが、秋以降、再び強気に転じており、半年前の5月~6月ごろと同じ2,000ドル水準まで値上がりしている。この背景のひとつとして現地の飼料コストの上昇がある。
ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)によると、20/21年度の穀物生産量は前年度比3.5%増の2億6,590万tと過去最高を更新することが見込まれるなど、生産状況は好調だが、レアル安を背景に生産者の輸出意欲が高いうえに中国の買付けも旺盛にあることから、結果的に国内在庫が減少するなどして飼料コストが上昇しているという。
現地では少なくとも大豆の収穫期である2月~4月ごろまでは飼料コスト高が継続すると見られている。また、夏のハイシーズンで国内の鶏肉需要が堅調にあることもコストの上げ要因となっている。
日本国内では、新型コロナの影響で外食需要が大きく落ち込んだが、8月積み以降、3万t台前半まで調達量を抑えてきたことや、秋口になって外食需要が少しずつ回復したこともあり、6月に15.2万t(前年同月比23.7%増)まで膨らんでいた国内輸入在庫は10月末現在で13.4万t(同2.7%減、ほか未通関在庫が8,733t・6.4%増)と改善しつつあった。
折から国産物の凍結在庫が少ないこともあり、一時期は手羽元など副産物の引合いが強まるなど、先月上旬の段階では、年末の需要期に向けてにわかに明るい兆しが見えつつあった。
ところが、新型コロナの新規感染者数の増加もあり、11月の3連休以降、状況は一変し「外食筋や業務卸からの引合いはピタッと止まってしまった」(関東の卸筋)という。
この間、在庫がある程度絞られてきた関係もあり、国内相場もモモ正肉で240円絡みを保っているが、やはり200gアップなど大きいサイズほど動きが止まり、弱含んでいる状況という。
「いまのコロナの状況を考えると、来春にかけて需要がどのようになるか予想が付き難い。あくまで個人の考えだが、3月の決算期を控えることもあり、なるべく在庫は持ちたくはないため、先物のコストが上がっているからといって、ここは無理して買い急ぐ必要はない」(関東の輸入筋)と、先物の買付けには慎重な意見が多い。
ただ、そうしたなかでも、「北海道や東北など、今後の鳥インフルエンザの広がりによってはマーケットが一変する可能性もある。それに景況感の悪化で正月明け以降、消費者の節約志向は一段と強まることが予想され、やや持ち直す可能性もある」など、光明を見出す向きもある。
〈畜産日報2020年12月15日付〉