鳥インフルエンザ拡大が続けば豚肉価格上昇の可能性も、日本食肉流通センター第2回「新型コロナウィルス感染症関連での食肉業界の販売動向等」

「新型コロナウィルス感染症関連での食肉業界の販売動向等」
日本食肉流通センターは2020年末、「新型コロナウイルス感染症関連での食肉業界の状況」をまとめた。2020年8月に第1回目の調査内容を公表したが、今回は第2回目として11月中旬から12月上旬に調査した内容をまとめたもの。また、日本食肉流通センターの公表内容と貿易統計からコロナ禍の牛・豚の部分肉価格の動向、牛肉輸出への影響をまとめた。

2020年11月までの食肉業界の状況を見ると、新型コロナウイルス感染症問題発生により、国内の食肉に対する需要が外食から中食・内食へ移行する割合が高まり、8月以降も継続している。外食産業の売上げは、4月を底として回復しつつあるが、全体としては、10月時点でも2019年を下回っている。一方、家庭内消費の増加を示すスーパーでの食肉の売上げが4〜5月頃は2割前後増加したが、10月には1割程度の増加となった。

緊急事態宣言下の4〜5月は、外食への影響が大きく、和牛肉をはじめとする高価格の食肉の需要が減少した一方で、豚肉への需要が高まった。そのため食肉の卸売価格は、和牛肉が大きく下落し、豚肉が上昇した。その後、政府の食肉消費促進支援策や牛肉輸出が回復から増加に転じたことで、調査時点では、牛肉価格は前年と同等程度に回復し、豚肉価格も軟調気味になった。

一方、家庭内消費の増加を示すスーパーでの食肉の売上げは4〜5月は2割前後増加したが、10月には1割程度の増加となった。食肉卸売業者は、外食などの販売先の営業の好・不調に対応するため政府のコロナ対策に参加すること、および販売好調なスーパーへの販促を図ることなどによって対応している。和牛の高価格部位は、ホテルでの需要減少などによる販売不振が継続しており、輸出が増加に転じたものの、価格は前年を下回って推移している。豚肉価格は、直近(調査時点)では軟調になり、卸売業者は利益率の回復を期待している。

複数の社によると、直近の牛肉相場は、実需に基づくものではなく、政府のコロナ対策などに支えられたものとの見方が出されており、今後、政府によるコロナ対策の動向によっては需要の回復がすぐに見込めず、牛・豚肉の価格が下落する恐れがあるとの懸念が出されている。

また内食需要の増加の継続、年末の需要期を迎えた中で、鳥インフルエンザの発生が国内で拡大しており、直近で鶏肉価格が上昇、今後もこうした状況が継続すれば、2月以降豚肉価格が上昇する可能性があると考える社も複数あった。

こうした中での対応事例では、和牛のヒレやロインの高価格部位の部分肉セット価格に対する比価を引き下げ、モモなどの従来の低価格部位の比価を引き上げるなど比価の調整を行っている。また販売不振な外食から好調な量販店への販売を強化するため、量販店にスペック変更を提案し、一部了承され売上げに貢献している事例もあった。

そのほか、農水省の事業により、新規に和牛肉を学校給食に提供、農業団体と連携した牛肉の販売促進、販売不振の高価格部位の凍結・保管(12月には一部販売予定)などに取り組む。

〈畜産日報2021年1月6日付〉