〈令和3年1月の需給展望 牛肉〉年末年始の小売り需要はマチマチ、相場高騰の反動の懸念も緊急事態宣言やGo To停止で和牛・高級部位は苦戦か

新型コロナウイルスの新規感染者数が増加するなか、2020年12月の牛枝肉相場は行政の支援事業の効果も手伝って買いの動きが一服することなく、第4週目までジリ高に推移した。結果、12月の月間平均相場(東京市場)は、和牛去勢A5で2,906円(前年同月比143円高)、A3が2,387円(同376円高)と前年実績を上回り、2019年に匹敵する価格を付けた。

年末年始の末端需要は帰省の自粛やGoToキャンペーンの停止、一部地域では大雪などの影響もあり、地方の観光業、飲食店が苦戦し、量販店の販売も振るわなかったもようだ。

都市部の量販店では人口流出が少なかったため、歳末大売出しでは例年以上に和牛・国産牛の売り込みを強化した企業が多い。結果、スライス・切り落とし系はもちろん、焼肉も好調だった店舗がある半面、プラスながらも期待したほどの数字にはいかなかった企業もあるなど、都心部の量販店でも温度差が生じたようだ。

このような環境のなか、問屋筋ではすでに12月の相場よりも概ね2割程度安い見積もりで納品を決めており、補助事業があるとはいえ、中間流通サイドはかなりの逆ザヤに苦しむ状況となった。

1月から2月は例年、牛肉消費が落ち込む時期。だが、今年は1都3県で緊急事態宣言が発出されることとなり、例年以上の落ち込みが懸念される。GoToトラベルの一時停止も延長される見込みのため、ホテルなどの地方需要も厳しいと予想される。

国の「国産農林水産物等販売促進緊急対策」による学校給食での利用や、同事業の「地域の創意による販売促進事業」が追加公募されるなど好材料もあるものの、ここ2カ月の高値相場の反動もあり、和牛の上位等級やロース、ヒレなど高級部位は苦戦を強いられると想定される。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、1月の成牛出荷頭数は和牛が前年同月比3.8%減の3.3万頭、交雑種が同3.4%減の1.8万頭、乳用種が同7.3%減の2.6万頭と予想している。

全ての品種で出荷頭数の減少が見込まれるが、11月から12月にかけて予想以上に相場が高かったことから、早出ししたケースも考えられ、さらに、緊急事態宣言に関する報道を受けて出荷を控える動きも想定される。輸入品もチルドが同4.2%減の2.0万tと少ない予想だ。

〈需要見通し〉
年末年始は、前述の通り、量販店では例年以上に和牛・国産の販促に力を入れ、一部、年始の店舗休業による消費者の買いだめもあり輸入牛もマズマズの動きだったようだ。ただ、国産・輸入ともに年明け後の末端の発注は少なく、静かな動きとなっている。

緊急事態宣言をめぐる動きもあり、問屋筋も例年以上に慎重な対応となっている。飲食店の営業短縮やGoToキャンペーンの停止が延長された場合、単価の高い和牛上級物や、交雑、ホルスを含めたロース・ヒレの販売は苦戦を強いられそうだ。

その半面、スソ物中心に学校給食や宅配の利用、量販店ではスライス、切り落とし、ひき材関係の需要は底堅いと予想される。和牛の相場高から、再び交雑種、ホルスに回帰する動きも強まると予想される。

〈価格見通し〉
今後の枝肉相場は基本的に下落相場となるが、緊急事態宣言下での消費動向と、行政の支援事業の利用を含めた来期の各社の方針にも左右されるといえる。

2021年春の小売需要は2020年のような特需は見込まれないと想定され、春先に向けた凍結在庫の確保もよほどのことがない限りは無理な買いは避けたいとみられる。

少なくとも2月にかけては、足元の状況を見ながら柔軟な買いの動きが予想され、1月の月間平均相場は和去A5で2,700円前後、A4で2,300円前後、A3で2,200円前後まで値下がりし、交雑去はB3で1,600円前後、B2で1,450円前後、乳去は990円前後とほぼ横ばいと予想される。

〈畜産日報2021年1月8日付〉