〈令和3年1月の需給展望 鶏肉〉緊急事態宣言で一層の内食需要強まり、国産相場はもちあい

〈輸入品需要期待できず苦戦続く、一部では量販店需要に期待〉
2020年12月の鶏肉需給は、最需要期による引き合いに加え、新型コロナウイルス感染症の第三波の影響もあり、外食自粛ムードが強まり国産生鮮を中心に量販店需要が強く、続伸した。気温の冷え込みと、野菜価格の安価安定も手伝い鍋物需要も強かった。

例年はこの最需要期に向け凍結在庫を確保しておくことで、需要に応えるが、ことしは春以降、内食需要の高まりから生鮮の引き合いが常に強く、相場が高値推移を続けたこと、コロナ禍での先行き不安も重なり、数量・コストの両面で凍結確保ができなかった。

さらに11月初旬以降は高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)が続発し、肉用鶏農場や肉用種鶏農場での発生もあり、全飼養羽数に占める肉用鶏の殺処分羽数はわずかではあるが、先々の供給不安も散見されている。

一方で輸入品は、外食の忘年会需要が皆無だったことに象徴されるように、外食需要が回復せず苦戦が続いた。ただしクリスマス向けの骨付きモモだけは、現地での生産遅れの影響から、数量が限定的だったこともあり品薄高で推移した。

12月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが688円(前年608円)、ムネが312円(266円)と引き続き前年を大きく上回り、正肉合計1,000円と前年比126円高となった。前月比ではモモは33円高、ムネは9円高となった。なお年内最終報告ではモモ710円、ムネ315円の高値を付けた。

〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラーの生産・処理動向調査によると、2020年12月の生体処理羽数は前年同月比1.2%増、処理重量は0.4%増と、ともに再び増加に転じた。結果2020年累計では処理羽数が前年比2.5%増、処理重量は2.1%となり供給体制の拡大が続く。1月の処理羽数は1.2%減、処理重量は2.2%減を見込む。地区別では北海道・東北地区の処理羽数は0.5%減、処理重量は1.4%減と予測。南九州地区(宮崎、鹿児島、沖縄)では、処理羽数0.1%減、処理重量は1.1%減を見込んでおり、ともに羽数以上に重量の減少が目立つ。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば、1月の国産生産量は13.7万tと前年同月比1.1%減を見込み、前月比では2.1万t減を予測しているそのため2020年11月から2021年1月の3カ月平均では14.6万t・0.6%増と予測している。輸入品は、12月は外食需要が回復せず見通しが不透明な状況で前年同月を7.8%下回る4.1万tと予測するが、1月は国内でのHPAI発生に伴う輸入鶏肉需要増を見込んだ輸入業者の買い付け増から4.3万t・4.0%増と予測している。そのため3カ月平均では4.3万t・4.6%減と予測している。

〈需要見通し〉
国産生鮮は例年、年末年始をピークにジリ下げ展開となるが、ことしは首都圏を中心とした再びの緊急事態宣言の発出によるさらなる内食需要の高まりに加え、HPAI続発による先々の不安から、1月以降も年末年始の需要水準が継続すると見られ、国産供給量が前年同月比で微減することからも、相場が下がる要因が皆無。ただしHPAIによる肉用鶏の殺処分羽数は、全飼養羽数の0.5%程度であり、搬出・移動制限は発生が抑制されれば順次解除される。

一方で輸入品は緊急事態宣言下では外食需要は期待できず厳しい状況は変わらない。一部では国産相場の高止まり、HPAI発生に伴い、価格優位性の高い輸入品の量販店需要も期待されるが、過度な期待はできない。

〈価格見通し〉
国産生鮮はモモを中心に強い引き合いが続くことから、12月末から横ばいと予測される。そのため日経加重月間平均で、モモが705円前後、ムネは300円前後と予測する。農水省市況ではモモが725円前後、ムネが320円前後と見込まれる。

〈畜産日報2021年1月12日付〉