〈令和3年2月の需給展望 豚肉〉需要低迷期で相場の上げ要素乏しい、今後の出荷動向が鍵に
1月の東京市場の月間平均相場は、上物税抜きで459円(税込み496円、前年同月比40円高)となった。
豚価の動きをみると、上旬は正月休み明けの補充買いなどで500円を上回る高値で推移した。その後、中旬以降は出荷頭数が1日当たり7万頭前後で推移するなか、緊急事態宣言下で末端消費は底堅く推移したものの、年明けの節約志向などの影響から豚価は下落。最終週には400円を割るまで下げるなど、上旬と下旬で大幅な価格差が生じた。
昨年は豚価の高値推移が続いたことで凍結玉を仕込むタイミングがなく冷凍在庫が少なかったが、ここにきて豚価が下がったことで凍結回しにする動きも多くみられる。
2月は基本的に需要が低迷する時期となるため、相場の上げ材料は乏しい。しかし、緊急事態宣言の延長によって、引続き量販店を中心に需要は堅調に推移するものとみられる。
また、今月は祝日の関係で稼働日が少ない週が2回あるほか、昨年末から年明けにかけての早出しの反動など今後の出荷動向によっては相場はやや締まる可能性もある。このため、2月の豚価は中旬にかけてやや持ち直すとみられ、月間平均では上物税抜きで450~460円(税込み490~500円)前後とほぼ横ばいで推移するとみられる。
〈供給動向〉
農水省が1月27日に発表した肉豚生産出荷予測によると、2月の出荷頭数は130.7万頭と前年同月比で1%減少すると予測している。1月は当初4%の減少が予想されていたものの、昨年末から年明けにかけて出荷が集中したことで、1日当たり7万頭前後と潤沢な出荷頭数となった。
2月は「建国記念の日」「天皇誕生日」と2日間の祝日で4日稼働の週が2つあるため、1日当たり平均(18日稼働)で7万2,000頭強と推定される。2月は過去5年平均比でみても1%減とある程度安定した出荷が見込まれる一方で、一部の地域では寒波による増体不良など天候による出荷への影響が懸念されることに加え、この間の早出しの影響から出荷が減ってくる可能性も考えられる。
農畜産業振興機構の需給予測では、2月のチルド輸入は同2.8%減の3万4,000tと予測。北米からの入船遅れの影響で市中在庫はタイト感が漂っているなか、2月も恒常的な入船スケジュールの遅延から、締まった展開が予想される。
〈需要見通し〉
アイテムでは、バラやカタロースのスライス材中心に引合いがある半面、ロースやヒレなどの動きは落ち着いている。モモやウデなどは凍結品の在庫が少ないことから、豚価が下がったタイミングで凍結回しに仕向けるケースが散見される。
2月は緊急事態宣言の延長など、ある程度底堅い末端需要が見込まれるものの、食肉需要全体として低迷する時期であることに加え、昨年の緊急事態宣言下のような仕入れ増加や消費拡大になることは考え難く、これといったイベントもないことから、需要を押し上げるには至らない可能性が高い。一方で、今月はスーパーの決算月となるため、中旬以降の特売の動きがどの程度強まってくるかが注目されるところ。
〈価格見通し〉
現状の需要と供給のバランスからみて、2月の相場の上げ材料は乏しい。強いて挙げるならば出荷動向次第といった向きが多く、早出しの反動など出荷の谷が出てくれば、相場が持ち直す可能性もある。また、需要の低迷期とはいっても緊急事態宣言下で量販店を中心にある程度の需要が見込まれることから、現状より大きく下げることは考え難い。このため、中旬にかけて相場は強含むとして、月間平均では上物税抜き450~460円(税込み490~500円)と予想する。
〈畜産日報2021年2月3日付〉