〈令和3年2月の需給展望 牛肉〉緊急事態措置延長で需要好転材料なし、上場減で相場下げは限定的末端消費は切り落とし中心、外食不振・景気悪化の影響懸念も
正月休み明け以降、緊急事態措置下でもスーパーなど小売需要は総じて堅調にあるものの、単価の高い牛肉の売れ行きは、鶏肉・豚肉に比べると頭打ちの様相を呈しており、動いているのは切り落としや輸入牛肉など安価な商材にシフトしている。しかも、年末年始までは和牛など家庭でプチ贅沢をしようという雰囲気があったが、これからはいよいよ景気悪化が支出にも影響してくるとみられ、需要の面では正念場を迎えるといえる。
中間流通としても決算月も控えるなかで、与信や在庫の管理も厳しくなるため、今後の枝肉市況は下げ基調と考えられる。ただ、出荷・上場頭数が少ないことや、来年度の支援事業に向けた枝の確保の動きなどから、相場の下げ圧力は限定的と思われ、引続き実需とコスト(枝肉相場)が相反する展開となりそう。和牛去勢A5で2,500円前後、和牛去勢A3で2,000〜2,100円、交雑去勢B3で1,300〜1,400円、乳去で1,000円前後と予想する。
〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、2月の成牛出荷頭数は和牛が前年同月比0.1%増の3万3,500頭、交雑種が前年同月比2.8%減の1万7,000頭、乳用種が前年同月比6.4%減の2万3,900頭と予想している。和牛はそれなりの上場頭数が見込まれるものの、12月までの早出し出荷の反動もあり交雑種などは搬入物含めて上場数が少ない可能性もある。輸入品もチルドが前年同月比5.5%減の1万8,100tと少ない予想だ。
〈需要見通し〉
関東・関西ともに1月の3連休明け以降も小売り需要は底堅く推移している。地域によってマチマチだが、大阪府の私鉄系スーパーは「国産・輸入に関わらず、ステーキ、焼肉、スライスなど全般的に売れている。ただ販売額・量ともに豚肉の構成比が上昇している」と話す。また、関東の中堅スーパーは「最近は和牛・国産牛のモモの切り落とし中心で、ロース、カタロースのスライス関係、ステーキはやや苦戦している。あとは合いびき肉とUS産チャックアイのステーキは好調。味付け肉は売れていない」としており、牛肉全体としてはそれなりの動きがあるもよう。
ふるさと納税や通販などの需要も堅調で、今後も続くとみられる。とくに流通業界では、2月下旬にかけて決算セールの需要も期待されるが、低価格志向が強まっているため、枝相場高が続くなかで末端の要望にどれだけ価格面で対応できるかがポイントだ。だが、関東の卸筋からは「ロース、カタロース、ヒレを下げたとしても、切り落とし用のアイテム単価を100円も200円も上乗せすることはできない」と厳しい声もでている。
また、厳しいのが外食需要。関東の業務卸筋は「時短営業の影響は深刻。営業時間の変更やテイクアウトなど努力されているが、一部外食関係の取引先からは支払猶予の依頼も出てきている」としている。中間流通段階でも年末ではけた在庫が、ロース・ヒレを中心に再び増えてきており、これら外食・ホテル向けアイテムの在庫消化が課題といえる。
〈価格見通し〉
需要面でのプラス材料が乏しく、相場も中下旬に向けて弱気推移とみられる。行政の支援事業の一部は来年度も継続するものの、「インターネット販売推進事業」など終了するものもあり、これら支援事業に関する企業の動きも市況に影響してくるといえる。月間平均相場は大幅な下げはなく、和去A5で2,500円前後、和去A4が2,200円前後、和去A3が2,000〜2,100円、交雑去勢B3が1,300〜1,400円、B2は1,300〜1,200円、乳去B2が1,000円前後と予想される。
〈畜産日報2021年2月4日付〉