〈令和3年4月の需給展望 豚肉〉荷動き鈍化も月前半の相場は400円半ばを維持

〈後半はGW手当てで500円超えも、月間平均で480円~490円〉
緊急事態宣言下ではじまった3月だが、21日には全国で宣言が解除された。ただ、飲食店などに対する営業時間の短縮要請は継続されており、外食業態では依然として厳しい状況となっている。

豚肉需給も引続き量販店を中心とした家庭内消費が中心となった一方で、今年は「春分の日」が土曜日で3連休ではなかったことに加え、学校給食の停止や節約志向の高まりも相まって、荷動きは比較的落ち着いた展開となった。東京市場の平均相場は上物税抜きで444円(税込み479円)と前年同月比で2円安とわずかに下回った。

前年は新型コロナの不安感から後半にかけて急騰したが、今年は逆に、第1~2週目までは同400円台後半と前年相場を上回る高値で推移していたものの、第3週目以降は400円台前半まで下落し、ジリ下げの展開となった。

4月は例年、新学期が始まるほか、春の行楽需要などが見込まれるが、今年は外出自粛ムードが続くことが予想され、需要の盛り上がりは期待できない。さらに、家庭内消費も前年ほどの巣ごもり需要や買いだめ需要は見込めない。出荷頭数を勘案しても、月前半の相場の上げ要因は少なく、同400円台半ばで推移するとみられる。ただ、後半にかけてはゴールデンウィーク(以下、GW)に向けた手当ての動きが強まることが予想され、500円超えの可能性も考えられる。

〈供給動向〉
農水省が3月24日に発表した肉豚生産出荷予測によると、4月の肉豚出荷頭は136.7万頭と予測している。例年、夏にかけて出荷が落ち込む時期となるが、4月の出荷が140万頭を割るのは2018年以来、3年ぶり。さらに、前年のと畜頭数(144.9万頭)が多かった反動もあり、前年同月比では6%の減少を見込む。過去5年平均比でも1%減とやや少なめの出荷にとどまる見通しだ。

農畜産業振興機構の需給予測によると、4月のチルド豚肉の輸入量は前年同月比5.9%減の3万5,400tと予測されており、北米からの入船遅れの影響が継続するなか、一部の工場稼働停止の影響による供給減や飼料価格の高騰による現地相場高などを受け、前年割れのボリュームを見込んでいる。

〈需要見通し〉
前述のとおり、今年は花見など春の行楽需要は期待できない。首都圏では緊急事態宣言が解除されて人出が増えつつあるが、内食需要は引続き底堅く推移することが予想される。そうはいっても、2020年4月の宣言下ほどの巣ごもり需要や買いだめ需要でみられたような引合いは考えにくい。行楽需要も見込めない中で、4月に入っての荷動きは、モモやウデなどスソ物は堅調な一方で、全体的な動きは鈍い。

ただ、一部ではヒレの特売や、外食向けに徐々にロースの引合いがではじめている。GW期間については、コロナの動向次第といった向きが多く、旅行や帰省など人の移動が増えることが予想される一方で、新規感染者数が増加傾向にあり、“第4波”の到来ともなれば再び家庭内消費が強まる可能性も。また、輸入チルドの状況によっては、国産相場次第ともいえるが、代替需要による引き合いも考えられる。

〈価格見通し〉
4月1日~2日の東京市場の上物平均相場は税抜き464円(税込み501円)となった。現状、需要動向は決して良くはないが、新型コロナ“第4波”の到来、国内豚熱(CSF)問題といった懸念材料もあり、いつ相場が急騰してもおかしくはない状況だ。多くの不確定要素を抱えるが、出荷動向などを踏まえると、月前半は上物税抜き400円台半ばを維持することが予想され、GWの手当てがはじまる後半は500円を超える展開も考えられる。このため、月間平均(東京市場)では上物税抜きで480円~490円(税込み520円~530円)と予想する。

〈畜産日報2021年4月5日付〉