2020年度末の豚肉輸入在庫は15万t台まで減少、現地価格が高騰〈輸入豚肉在庫事情〉

〈必要以上の買い付け控え在庫は14~15万tで推移か〉
農畜産業振興機構が公表した豚肉需給表によると、2020年度(2020年4月~2021年3月)末時点の輸入豚肉の期末在庫は15万7880t(前年同月比14.7%減)となった。

16万tを下回るのは2019年3月(14万5268t)以来、2年ぶり。中国でアフリカ豚熱(ASF)が発生する以前は14~15万tが適正水準といわれた在庫感覚だったが、ASFを睨んだ調達による在庫の増加に加え、2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大による市場環境の悪化に伴い、在庫量は18~20万t と高水準で推移していた。しかし、2020年9月(19万3386t)に20万tを割って以降は漸減傾向となり、ここにきて在庫量は15万t台まで減少した。

需要面では、2020年は新型コロナの影響で年間を通じて内食需要の高まりからテーブルミート主体のチルドポークが堅調だった半面、フローズンポークは外食業態が大きな打撃を受けたことで低調な動きとなった。ことしに入ってからも全国で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった感染拡大防止策が講じられる中で、外食業態は苦戦を強いられている。一方で輸入量は、現地工場の稼働率低下や北米を中心とした通関遅延など新型コロナの影響によって供給が不安定な状況が続いたことに加え、4月以降は中国をはじめとするアジア諸国の買い付け増加や飼料価格の高騰による現地高から、調達を絞らざるを得ない環境となっている。

機構が4月27日に発表した豚肉需給予測では、4月と5月の国産を含めた豚肉全体の期末在庫を予測している。そこから輸入豚肉の在庫を予想すると、概ね15万t 前後で推移すると推計される。輸入量は引き続き飼料価格の高騰やアジアの買い付け増加による現地高や国内の外食需要の減少、前年の輸入量増加による反動などから、4月は前年同月比21.6%減の7万9600t(チルド3万5300t、フローズン4万4300t)、5月が同9.0%減の7万2700t(3万3100t、3万9600t)といずれも前年を下回る見込みだ。「需要が低迷する中、現地価格も高騰しており、短いタームで必要分を調達するしかない」(関東の卸筋)との向きが多く、必要以上の買い付けを控える動きが続くものとみられる。

今後の輸入在庫は、緊急事態宣言の解除などで外食需要が盛り返すなど出回り量の増加によっては「13万t前後まで減る可能性もある」(関東の卸筋)が、しばらくは14~15万t前後で推移することが予想される。

〈畜産日報2021年5月17日付〉