スターゼン 2021年は“我慢の年”、テーマは「相場に左右されない収益力の強化」/2021年3月期決算説明会

スターゼン 横田社長
〈機能強化による付加価値向上、営業拠点の再編とスターゼンならではの商品展開〉
スターゼンは5月26日、2021年3月期決算説明会をライブ配信で行った。横田和彦代表取締役社長が経営方針と今後の重点施策を、定信隆壮上席執行役員財務本部長が決算概要、奥村浩明執行役員経営本部長がウィズコロナの事業環境を説明した。

〈関連記事〉スターゼン 1年間でネット通販の売上倍増、食肉加工品・精肉・ミールキットとも伸びる

横田社長は、2021年は“我慢の年”と位置づけ、事業基盤を盤石にして収益力を高めるとし、今期のテーマとして「相場に左右されない収益力の強化」を挙げた。

説明会では、奥村経営本部長が、事業環境として〈1〉ASF拡大、中国での母豚急減と急回復による世界的な需給環境の不安定性など食肉需給環境〈2〉国内消費動向〈3〉貿易関係〈4〉物流の2024年問題など構造的課題を挙げ、これが同社に小売向け販売好調、外食など業務用販売の不振、仕入れコスト変動リスクの上昇、物流・保管費の高騰、コスト増加分の価格転嫁の停滞、輸入食肉の調達価格の不安定――として影響したことを説明した。

定信財務本部長は、2021年3月期の売上高0.6%減の3,492億円、経常利益48.5%増の86億円について、「売上面は堅調な内食需要を背景に国産豚肉の売上高が増加、一方、外食やインバウンド需要の減退で国産牛肉や輸入鶏肉、輸入内臓肉の売上高が減少した。利益面では、上期に値ざやが改善した国産牛肉や、売上げを伸ばした輸入牛肉・加工食品が増益に貢献した」と述べた。なお、売上総利益のプラス31億円のうち、国産牛肉がプラス7億円、輸入肉プラス16億円、加工食品プラス7億円だった。

続いて横田社長が、今期のテーマ「相場に左右されない収益力の強化」を踏まえ、「食肉販売は、仕入値がベースとなるが、相場が高騰しても最終販売価格になかなか転嫁し難いケースがある。スターゼングループが安定的に結果を出せる企業とするために、このテーマに向けて、当社機能強化による付加価値の向上、ローコスト経営の推進の2つの軸から課題解決に向けてアプローチしていく」と、今期の基本方針を示した。

機能強化による付加価値向上では、〈1〉営業拠点の再編とスターゼンならではの商品の強化、〈2〉海外事業の強化――に取り組む。

営業拠点再編では、スターゼンは全国に営業拠点約50カ所、営業車両約500台、プロセスセンター(PC)5カ所、食肉の処理加工場7カ所、加工品製造工場7カ所を有す。これに対し、人件費抑制、商品の高付加価値化、営業効率化、工場の安定稼働、自社配送の価値浸透が挙げられる。

このうち、高付加価値化では、「単に加工度が高い商品を増やすのではなく、食べておいしい商品、ユーザーが使いやすい商品規格、包装を考える。食肉のプロとして、スターゼンならではの商品を開発していく」。

自社配送の価値浸透では、「商品を当社の責任で顧客に安定した品質で届ける。これを一つの付加価値として認識してもらい、商品だけではなく、物流機能に対しても適正な対価をいただけるようにする」。

すでに取組みを開始した事例では、「2020年度は宮城県の多賀城にローストビーフなどスライスパックを行うPCを併設した営業拠点を設立した。営業と製造が同じ場所にあることで商品開発のスピードが向上した。また同じ東北で、営業拠点をDC化、つまり物流機能に特化した拠点とした営業所もある。配送と営業活動の分離を推進し、営業効率を高めることが狙い」と紹介した。

スターゼンならではの商品の展開では、「賞味期限を延長したスライスパック(脱酸素剤入りなど)、小売店舗のバックヤード作業を軽減する味付けキット商品、ローマイヤ100周年記念ギフト、お肉不使用の代替肉ゼロミートに取り組んでいる。また、これらの商品をウィズコロナで伸長しているネット販売、フードデリバリーなどへの展開にもつなげたい」と述べた。

〈畜産日報2021年5月27日付〉