〈令和3年6月の需給展望 鶏肉〉国産生鮮は量販需要堅調も特売実施に販売数量確保
5月の鶏肉需給は3回目の緊急事態宣言・延長もあり、量販店での販売は堅調に推移した。
しかし夏場に向け生鮮モモ需要は弱まるため、量販店では特売が散見された。特売効果もありそれなりの販売量を維持したようだ。ムネは引き続き安定した引き合いに支えられ、ササミや手羽先は引き合いが多くやや不足気味となった。生鮮品は全体的に安定した需要に支えられたこともあり、相場の下げ幅が少なく、凍結品の確保はあまり進まなかったようだ。
今後は梅雨時期から夏場にかけて相場の下落幅も勘案しつつ凍結品の確保が進むとみられる。輸入品は宣言下では需要が回復せず、荷動きも落ち着いている。今後は20日の宣言解除後の市場活性化に期待したい。
5月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが657円(前年609円)、ムネは303円(254円)と正肉合計960円となり前月比22円安となったが、昨対比97円高となっている。モモは前月比20円安、2円安となった。
〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラーの生産・処理動向調査によると、6月の生体処理羽数は前年同月比0.8%増、処理重量は1.2%増と引き続き増加基調を予測している。
地区別では関東地区や近畿地区では昨対減となるものの、主生産地の北海道・東北地区では羽数が3.3%増、重量は4.2%増、南九州地区(宮崎、鹿児島、沖縄)では羽数が0.3%減、重量は0.3%増と予測しており、南九州では羽数こそ微減を見込むが、北海道・東北地区では増加を見込む。
7月も増加基調が続くものと見られ、羽数・重量ともに1%前後の増加見込みで増加基調が続く。ただしことしの夏は例年よりも、暑いと予測されており増体不良となれば秋口の供給に影響を与える可能性もある。
農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば、6月の国産生産量は14.1万tと前年同月比1.9%増を見込み、前月比では2,000t程度の増加を見込む。4~6月の3カ月平均予測では、4月こそ昨対減となっているが、5、6月が昨対増予測のため、0.7%増の14万tと予測している。今後も暑さによる増体不良や大規模な動物疾病の発生がなければ、14万t前後での安定した生産体制を維持すると見られる。
輸入品は、5月は主要輸入国のブラジル・タイからの輸入が増加し、昨年同月が少なかったこともあり30.7%増の4.7万tの予測。6月はタイからの輸入は増加するが、ブラジルからは減少する見込みで、全体では8.0%減の4.7万tを見込む。3カ月予測では5月の大幅な昨対増もあり5.0%増の4.7万tと予測している。昨対比では月毎に差が見られるが4.7万t前後の輸入量を維持している。
〈需要見通し〉
国産生鮮は引き続き安定した内食需要、量販店需要に支えられる。ただし夏に向けてモモ需要減退は避けられないため、特売の実施など売価を下げて販売量を確保すると見られる。ムネは量販・加工向けともに安定した引き合いが続く。相場動向を見ながら凍結品の確保を進めるため、全体の需要は維持される。
副産物ではこれから需要が強まる手羽先は品薄感があり、引き合い次第では一段高となる可能性もある。輸入品は20日の宣言解除後の外食産業の需要に左右されると見られ、感染状況など状況の注視が必要になる。
〈価格見通し〉
国産生鮮モモはジリ下げ、ムネはもちあいと予測する。しかし価格下落を見越し、凍結品確保の動きが全体で強まれば、下げ幅が縮小される可能性もある。それでもジリ下げ展開には変わらず、日経加重平均ではモモが635円前後、ムネは300円前後、農水省市況ではモモが650円前後、ムネは320円前後と見込まれる。
〈畜産日報2021年6月4日付〉