食肉各社でネット通販売上伸長、「スーパーからネットへ“チャネルスイッチ”」と楽天市場【拡大する食肉・食肉加工品のネット通販】
ここで、中間的な取りまとめを行うことにしたが、各社を取材する中で、想像以上に食肉・食肉加工品のネット通販が伸びていることが明らかになった。従来からの取り組みにもよるが、昨年の売上は二桁増から2倍以上など各社とも大きく伸ばしている。
最初にMLA・楽天に取材した折、楽天市場の食肉販売の変化について聞いたところ、「楽天市場での食肉の販売は、贈答用、高級しゃぶしゃぶなどの需要が高かった。しかし、2020年は、自家需要として単価がそう高くない2~3千円の価格帯を中心に買う傾向が見られた。ECを通して購入するお客様が確実に増え、それが加速された年だった。2019年と2020年を比較した牛肉の成長率は70%増であり、かなり伸びた。非常事態宣言が出される中、GWに向けて最も伸びたが、その時にスーパーに行けなかった消費者がネットでお肉を探し購入するという“チャネルスイッチ”がかなり起きた」と総括した。
こうした傾向は、各社でも同じだ。スターゼンはネット通販を強化しており、現状について「ネット販売では、冷凍の食肉スライス、ハンバーグ、ローストビーフやミールキットが好調だ。当社でのネット販売全体の売上高はこの1年で倍増した。ここに来て目立つのは福袋などの商品群だ。在宅需要で、外で食べる機会が減る中で、バラエティーに富んだ商品が一つのセットで買えるのが評価されている」と話す。
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日本ハムでは、公式通販サイト「ニッポンハムお届けネット」と並行して流通企業のネット事業への取り組みも強化し、自社通販サイトの成功事例を流通企業と共有し、両社の売上に貢献する取り組みを行っている。もともと、食物アレルギーで困っている方に向けた食物アレルギー対応商品「みんなの食卓」シリーズを提供する中で、消費者に直接届けるために同お届けネットを開設した経緯がある。「アレルギー対応食品みんなの食卓シリーズの引き合いが強く、コロナ以前から変わらず人気上位の商品となっている」。またネット通販では、通年ギフトの販売に注力しており、「昨年、通年ギフトの売上金額が前年の約2倍に伸びた。今年はさらに前年の2倍を目標としている」。
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伊藤ハムではグループ会社の伊藤ハムフードソリューションとネット通販に取組み、同フードソリューションの2020年4~5月の得意先Web業態関連の売上は2019年の約1.5倍と大きく伸長した。ギフト市場では、ポストインギフトや日常の贈り物などのカジュアルギフト、母の日・父の日や出産祝いなどライフイベントギフトの構成比が高く、これらはネット注文の構成が高い。現在、特にライフイベント、なかでも出産内祝いギフトに向けてギフト通販会社の通販サイトで「名入れハムギフト」を展開している。国産豚肉を使った熟成規格のロースハムを展開し売上は順調に伸びている。
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米久では、楽天市場など3つのショッピングモールと自社サイトの4店舗で展開している。自社サイトは今年で20年以上が経過しネット通販で長年の歴史を持つ。その中でも主力の「豚肉の味噌煮込み」は累計販売数438万本と圧倒的な支持を受けている。同社では、昨年から今年にかけて、通販業態の売上は1.5倍以上と大きく伸長した。「昨年の反動があるものの、コロナが一つのきっかけとなり、ネット通販というツール自体のベースアップに繋がったという実感がある。収束後も一定の需要が継続すると見込んでいる」。
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信州ハムでは、自社サイトと楽天サイトでの販売額は、73期実績(2019年7月~2020年6月)に対し74期は4月の段階で2.4倍に達した。また、ネット販売のテーマに「中元・歳暮期以外で信州らしい進物商品の創造」を掲げ力を入れる。これは、巣ごもり需要だけではなく、新型コロナで信州に帰省できない親戚などに、信州ならではの食品と信州ハムのセットを送り、故郷の信州を感じてもらう、長野県にある信州ハムならではのギフトだ。この7月にデジタルマーケティング課を新設し、さらにEC通販市場への取り組みを強化、信州をキーワードに同社にしかできない商品、アソートを考え開発・販売していく。
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〈畜産日報2021年8月24日付〉