スターゼン、節約とプチ贅沢との消費の2極化に対応【食肉加工品インタビュー】
スターゼングループは、コロナ禍で鮮明になっている節約志向と、プチ贅沢という消費の2極化に対応すべく商品開発を進めている。現在は、ミールキットや味付け商品、ローストビーフ、ハンバーグが好調。今秋以降も、スターゼンならではの商品として、ローストビーフ商品、各種ハンバーグ、さらに鍋物商品に力を入れていく。スターゼンの食肉加工品の現状、方向性について営業本部営業統括部加工食品販売部需給グループの鈴木雄太グループリーダーに聞いた。
スターゼン 鈴木雄太グループリーダー
〈秋冬はローストビーフ、ハンバーグ、鶏生だんごなど鍋物商材に注力〉
スターゼングループは、コロナ禍で鮮明になっている節約志向と、プチ贅沢という消費の2極化に対応すべく商品開発を進めている。現在は、ミールキットや味付け商品、ローストビーフ、ハンバーグが好調。今秋以降も、スターゼンならではの商品として、ローストビーフ商品、各種ハンバーグ、さらに鍋物商品に力を入れていく。スターゼンの食肉加工品の現状、方向性について営業本部営業統括部加工食品販売部需給グループの鈴木雄太グループリーダーに聞いた。
――直近の状況は
コロナ禍の中で、景気の先行きの不透明さから、消費者の節約志向が高まる一方で、旅行や外食の自粛に伴う代替消費として、おいしいものを自宅で食べたいという、ちょっと贅沢なものへの消費も起こり、消費の2極化が鮮明になっている。スーパーでは特売もあるが、その逆に、おいしいものを自宅で食べたいというニーズに応えた商品の売行きも好調だ。当社でも節約志向と、こうしたプチ贅沢の両面の対応をすべく商品開発を進めている。
また、自粛が継続する中、外食における本物のおいしさ、団らん、特別感などの「食の喜び」「食の楽しみ」を家庭でも味わいたいというニーズもあり、当社では秋冬の提案に向けて鍋商材などの開発を進めている。スターゼンとしては、原料へのこだわり、自社PCを持つ強みがあり、スターゼンらしい商品を開発し提供していく。
――好調な商品は
コロナ禍でニーズの高いミールキットや味付け商品などの簡便商品、ローストビーフやハンバーグなどの即食やストック需要に対応した商品、市場が拡大しているEC対応商品などが伸びている。オリンピック期間中は、ローストビーフをはじめテレビ中継を見ながら食べられるおつまみ商品を販売し好調だった。
またミールキットや味付け商品は、冷凍ケースを導入するスーパーが増えていることからも、需要が高まっており、当社の商品も伸長している。ローストビーフ、ハンバーグもそうだが、ミールキット、味付け商品も味の評価が高い。一方でコロナ禍、家庭でもストックするために大容量の冷凍庫がついた冷蔵庫への買い替えが増えているといわれ、今後もこうした冷凍商品の需要は拡大していくとみられる。
――現在の注力点は
当社は、「相場に左右されない収益力の強化」を今期のテーマに掲げている。関連して、高付加価値商品の拡充を目指している。高付加価値とは、単に加工度が高いだけではなく、スターゼンならではの商品を追求すること。スターゼンならではの商品とは、おいしい商品であることが大前提であり、当社しかもっていない商品、食の喜び、楽しみを味わえる商品と考えている。
具体的に言うと、まずローストビーフの拡充を図る。タレをかけてすぐ食べられるローストビーフは、特別感がありながら、即食・簡便商品でもある。特に、百貨店で好調な和牛のローストビーフは拡販の余地があると見込んでおり、今後、量販・スーパーでの小売で販売する。外食するよりはお得感がありながら、並ぶだけで特別な食卓になる。和牛のローストビーフは、肉のうまみを引き出す工夫を考えており、当社ならではの商品としたい。
また、これまでのローストビーフ商品は、個食タイプから少人数での喫食を前提としていたが、クリスマスから年末に向けて、家庭内の“ご馳走”として家族がみんなで食べられるボリュームパックの商品も販売する。現状では難しいが、ワクチン接種により、家庭で集まる食シーンが期待されるため、こうした商品も用意したい。
秋冬から年末に向けた商品としては、季節柄、食卓には欠かせない鍋物商材に力を入れる。多くの都道府県で、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が適用される中、外食自粛傾向は継続するとみられ、家庭での鍋需要の増加が見込まれる。
鶏生だんごは今秋からリニューアルし、事前の提案ではおいしくなったと評価をいただいている。鴨や鶏生だんごの鍋セットは昨年も好調であり、今年はラインアップを拡充させる。先ほどのスーパーの冷凍ケースも季節感など変化を求めている。肉屋としてスープと肉の相性などを吟味し開発を進めており、これが今回の鶏生だんごのリニューアルにつながっている。
秋冬限定の「鶏生だんご」シリーズ4種のリニューアルのポイントは、
〈1〉2種類の挽き目でほどよい肉粒感のある手ごね食感に仕上げた
〈2〉鶏肉の配合を調整しジューシーなうま味とコクをアップさせた
〈3〉産地やこだわりが目立つよう販促シールとパッケージを変更したこと
――の3点。
スターゼン「鶏生だんご」(プレーン)
「合鴨鍋セットつゆ付き」は、タイ産合鴨もも肉を使用、醤油ベースに昆布、かつお、しいたけの3種のエキスを配合したあっさりとして上品な出汁の専用つゆを付けた。また、冷凍ケース販売での霜による曇りを防ぐ脱気処理を行い、家庭の冷凍庫にストックしやすい薄型にした。
スターゼン「合鴨鍋セットつゆ付き」
一方で定番商品にも注力したい。ハンバーグについては、昨年、コロナ禍のストック需要を受けて大きく伸長した当社の冷凍ハンバーグ「ふっくらやわらかハンバーグ」「チーズインハンバーグ」は今期も引き続き好調。お客様の要望に応え、より幅広い世代に向けた新商品として春から「こんがり焼き上げハンバーグ」を提案し好評を得ている。今後も、和牛のすね肉を使うなど、さらにアップグレードの商品など一層お客様からの支持が得られるように商品開発していく。
「ふっくらやわらかハンバーグ」は、グレインフェッドの豪州産牛肉と国産豚肉を使用、生タマネギを加え特有の甘みと食感をプラスし手作りのようなふっくら生地を再現した。「チーズインハンバーグ」は、チェダー、ゴーダ、マスカルポーネ、パルメザン、モッツアレラの5種のチーズをブレンドし香り豊かなチーズがお肉とよくあうように仕上げた。春の新商品の「こんがり焼き上げハンバーグ」は、国産鶏肉をベースにした生地に生タマネギを使用して食感と甘味を加えた。90gとお弁当やおかずに使いやすいサイズで展開している。
スターゼン「ふっくらやわらかハンバーグ」「チーズインハンバーグ」「こんがり焼き上げハンバーグ」
――今後の方向性は
消費者の関心の高まりを受けてサステナビリティ対応も進めている。食の安全・安心に加え、サステナビリティの観点からも消費者に安心して選んでもらえる商品提案を進める。現在、スキンパック(バリアスキン)商品の拡充を進めている。凸版印刷のバリア性背板紙を用いた「精肉用スキンパック包装(グリーンフラット使用)」商品は、第60回2021年ジャパンパッケージングコンペティション」で一般社団法人日本印刷業連合会会長賞を受賞しており、流通にも評価をいただいている。食品ロスはもちろん、プラスチックトレイを使わないことで、廃プラ削減にも貢献している。
スターゼングループの加工品開発は、「美味しさ」「食の喜び」の追及を第1に進めている。その一環で、7月には、高い技術力・開発力を持つ、富士総合食品との業務提携を行った。同社との取り組みでは、ミールキットやオードブルセットなどの取り組みなど、現在、さまざまな商品について模索中であり、早急に具現化したい。当社の強みであるPC商品や現在EC市場の拡大に伴い伸びている当社のEC商品でも「美味しさ」「食の喜び」そして「サステナビリティ」を軸に、当社の強みと同社の技術力・商品開発力を融合し、商品開発を進めていきたい。
〈畜産日報2021年8月31日付〉