【日鉄物産の輸入ビーフの取組み】組織再編が奏功、顧客とより密接な関係を構築
日鉄物産のビーフ事業は、豪州に大手パッカーを所有していた旧イトマン時代から続く海外の有力サプライヤーとの協力関係のもと、メジャーブランドから豪州産和牛交雑牛肉といった独自性の高い差別化商品まで、広範なさまざまなブランドをそろえ、メーカーや卸売業者を通じて、外食チェーンや地方のリージョナルスーパーなどへ提供している。
とくに高品質なビーフの生産地として名高いネブラスカ州のパッカー・工場で生産する商品をオリジナルブランド化した「CaptainBeef」(以下、キャプテンビーフ)は、食を通じた「楽しさ」をテーマとした独自のマーケティングにより、発売から4年目を迎え、飲食店や地方のスーパーなどに浸透している。
同社によると、今年度(4~9月)の輸入ビーフの取扱実績は大幅増となり、昨年から続く新型コロナウイルス感染症の拡大による不安定な国内需要、産地コストの高騰など厳しいマーケット環境ながら、チルド・フローズンのいずれも前年を上回る実績となっている。このうち、フローズンビーフの増加は特筆すべきものがあり、中堅パッカーからの買付けが強みであったが、それに加えて大手パッカーのプレートやトリミングの販売が大きく伸張した。
そして、何よりも昨年春の組織再編の効果も大きい。同社はこれまで、ビーフ事業を担う畜産第一部は、米州ビーフ課、豪州ビーフ課と担当区分を産地で分けていた。輸入ビーフの産地が多様化するなか、2020年4月1日付でフローズンビーフ課、チルドビーフ課と商品の形態別に担当を分けて事業活動を行った。これによって業務の効率化や顧客サービスの向上につながった。「顧客とより密接な関係を構築することが可能となった」(フローズンビーフ課)という。
さらに、外食需要がコロナの影響を受けるなか、フローズンビーフ課を挙げて中食業態や冷凍食品メーカー、通信販売など新たな販路ルートを構築したことも取扱いの伸びにつながった。
下半期に関しては、それぞれの産地でコスト高の継続が見込まれるなか、国内需要は不透明感が強く、引続き輸入ビーフにとって厳しい事業環境が継続すると予想される。とりわけ、コストに関しては近年、業界が経験したことがないレベルで推移している。こうした環境下にあって、チルドビーフ課・フローズンビーフ課ともにそれぞれの顧客の細かな要望に対応しながら、産地提案・商品提案を進めていく方針だ。
このうち、フローズンビーフについては、産地の多様化を図るため欧州産や南米産の取扱いを強化しており、アイルランドや英国、スペイン、イタリア、ポーランド、フランス、オランダ、ウルグアイなど多岐にわたっている。そこでは日本の顧客向けにモモやバラのスペックの開発を進めているほか、タンなどオファールの取扱いも拡大しているという。今後も日本市場への輸出が可能な国については、飼養されている牛の特徴や現地価格の動向など、徹底的に調査したうえで調達先を広げ、顧客へ最適なものを提案していく。
またフローズンビーフ課では、世界の重要な課題となっているSDGs への取組みに畜産原料の分野で積極的に参画している。環境負荷軽減策を実施している海外の生産者と、早期より強固な関係を構築しており、2030年の環境目標を実現すべく、現在各顧客との取り組みを着実に進めている。
さらに、昨今アジア各国のビーフの需要が増大しつつあるなかで、日鉄物産食糧事業本部のアメリカ+アジア5カ国の拠点を最大限活用し、日本国産牛の輸出と三国間貿易を活発化させている。
チルドビーフも、現地のコスト状況をよく見極めつつ、「大手サプライヤーと購入する物量を維持しつつ、当社の独自性を出すことができる、カウ(経産牛)などやウルグアイ産など新たな産地を顧客に提案していく」(チルドビーフ課)考えだ。とくに「Captain Beef」に関しては、これまで主に外食業界、とりわけハイエンドクラスのレストラン向けにマーケティングを展開してきたが、EC市場や地方のスーパーなど新たな販路も広がっているため、「with コロナ」「after コロナ」に向けたマーケティングを模索していく考えだ。
このほか、商品別では米国ネブラスカ州のグレーターオマハ社との取組みによる「ビーフパティ」(80CL)が使い勝手の良さが高く評価されており、スーパーの冷凍食品コーナーでの取扱いや、ホテルのメニューに採用されるなど、新規の顧客が増えているという。コロナ禍による今後の国内需要は依然として不透明にあるが、日鉄物産では長年培ってきたノウハウとサプライヤーとの協力関係、そして販売先へのキメ細かな営業体制など優位性を発揮して販路を拡大していく方針だ。
日鉄物産「ビーフパティ」使用イメージ
〈畜産日報2021年9月22日付〉