オミクロン株流行で国産ムネ肉の需給締まる、相場は過去5年で最高値
新型コロナウイルスのオミクロン株流行に伴う感染者数の急増は、外食や観光需要にとどまらず、鶏肉の供給面にも大きな影響を及ぼしている。
工場の従業員の感染に伴い、休業や生産調整を行う産地もあり、生鮮物は欠品や産地の調整などの対応を余儀なくされている。現状では感染者数の減少や「まん延防止等重点措置」の全面解除といった兆しは見え難く、春の大型連休など今後の供給について不安感も募っている。
こうした状況もあり、2021年12月以降、荷動きは低下していた凍結在庫も底打ちして在庫消化が進みつつある。副産品に関しては、骨もの(手羽先・手羽元)は引続き堅調だが、セセリ、ハラミ、ナンコツなどの希少部位はひっ迫感が強く、相場も強含みの展開となっている。
工場の稼働率低下の影響を受けているのがムネ肉だ。流通各社の決算セールが展開されるなか、加工原料の引合いも強く、また北海道や東北、北陸の降雪の影響も手伝って需給は締まっている。このため、東京の荷受相場(日経加重)も、1月後半とほぼ変わらず、320~330円の範囲で高止まりしている。サラダチキン・ブームが一巡した2018年と2019年を除いたとしても、過去5年では最も高い価格水準だ。
「もともと加工原料の引合いが堅調にあるものの、いまは工場稼働への不安感が一番大きい。ここにきて東北の大手インテの工場が休業したこともあり、代替の引合いが入っている」(東海地方の荷受筋)、また、「流通企業の決算月もあり、12月に比べると荷動きは良くなってきた。畜肉では最も安価な商品であり、最近は美味しく調理できる様々な調味料があるため、この時期もテーブルミートとして根付いている」(関東の中堅スーパー)という声もある。
もっとも、モモ肉の相場が過去5年で2番目に低い水準で推移しているように、鶏肉全体の実需はすこぶる好調とまでは言えず、「12月に比べると動いているが、強い感じは受けない」(同スーパー)状況のようだ。
とはいえ、この産地工場の稼働問題はいつどこで発生・収束するか予想できず、春先需要に向けて供給不安は拭え切れない。中間流通にとっては決算期を迎えるところも多い。こうした要因も手伝って、「ムネやモモの凍結品も手前の在庫量は引続き多いながらも徐々にはける兆しが上がっているため、3月以降はそんなに無理して安く売る必要はない。底を脱しつつある」(関東の荷受筋)と見る。しかも前述のようなセセリ、ハラミなどは先行して生産の影響を受けて足りなくなっており、「これからは価格を上げていかないと難しい」(同荷受筋)という状況に移りつつある。
〈畜産日報2022年2月24日付〉