セントラルフーズ新狭山工場、「良い商品をつくる秘けつは“人”」〈精肉工場訪問〉
セントラルフーズ新狭山工場・山下征美工場長
新工場の特徴のひとつが、ハム・ソーセージと精肉半製品の製造エリアにIQF(個別急速冷凍)ルームを新設したことだ。山下工場長によると、大手メーカー向けトッピング材の利便性の向上と、ここ数年の冷凍食品市場の拡大を見込んで導入したという。
山下工場長によると「旧工場ではスライスしたものを真空パックにしてから凍結していた。ただ、真空パックがゆえに凍結すると中身がくっついてしまい、はがれ難いという課題もあった。バラ凍結によって、納品先の工場でほぐすことなく、そのまま使うことができるようになった。そして、各スーパーやコンビニエンスストアなどが冷凍食品の売り場を拡大する動きが特にコロナ禍以降、加速しており、新しい生活様式のなかで今後も成長が見込まれる冷凍食品のニーズを見込んだ」ためという。今後はミールキットの製造も視野に入れている。
山下工場長にここ数年の商品トレンドを聞くと、ハム・ソーセージ関係は横ばいから右肩下がりの傾向になりつつある半面、受注が伸びているのが精肉半製品だ。「精肉半製品でも、とくに味付け肉は、ここ10年で大きく伸びている。味付け肉といっても、肉をカットしてタレ漬けすることはどこでもできるが、当工場の場合、ソミュール液など下地を肉自体に付けて柔らかく加工を施している。その上でタレ付けをして商品化しており、その部分が非常に評価されている」という。
このほか、おせちもコロナ禍を機に数量が拡大している。ギフト関係も全体的に厳しいものの、従来からあるハムの1本物よりは、バラエティーパックのようなセットのほか、冷凍保存ができ、従来のハム・ソーセージ以外の商品が伸びており、「髙座豚の味噌漬けや生ウインナーとスライスロールのセットなど、いままでと少し目先を変えた商品が伸長している」と話す。
新工場では、IQFなど最新設備を導入する一方、旧工場時代から培ってきた幅広い対応力と高度な技術力を受け継いでいる。「ハム・ソーセージ・ベーコン製造技能士」の資格を持つ職人をはじめ、工場を挙げてこだわりを持って製造している。
「とりわけ、当社の代表商品である『ローゼンハイム』『髙座豚』ブランドは、かなりのこだわりを持って製造している。髙座豚に関しては、生産農家と提携して豚を育てる段階から研究を重ね、肉質の優れた豚肉を使って製品化している。ローゼンハイムも40年近いロングセラーであり、人気の『布巻ロースハム』をはじめ、ウインナーなど、常に研究を重ねながらお客様に提供している」と胸を張る。業務用商品のローストビーフも、「発注元は黒毛和牛の4等級のサーロインやモモを使うなど原料の段階からこだわっている。その製造を請け負う我々工場サイドも、そのこだわりに応えるよう、素材の良さを引き出すことができるよう、工夫して製造している」。
セントラルフーズ「あづまシリーズ」
セントラルフーズ「短冊ベーコン」
新狭山工場には、「ハム・ソーセージ・ベーコン製造技能士」が19人在籍しているが、パートタイマーである「クルー社員」(86人)も、こだわりの製品づくりに欠かすことができない存在だ。
「実は、当工場のクルー社員も非常に技能に優れている方が多く在籍している。10年以上在籍する者が全体の40%で、クルー社員全体の在職期間も平均9年と離職が少ない。クルー社員の方々も技術をどんどん身に付けており、その方たちを大切に、戦力として長く働いてもらえるかという部分にもかなり気をつけて運営している。なかにはこの人がいないとこの機械が満足に動かすことができない、この仕事はほかの人にはなかなか任せられない、というような熟練したクルー社員もいる」という。
最後に山下工場長は、今後の展望について、「良い商品をつくる秘けつは、やはり『人』が重要になる。人をどれだけ育てることができるかによって、良い商品を作ることができるか否かが決ってくる。社員・クルー社員ともに、より技術を磨いていくことで競争に勝ち残っていく努力を継続していきたい」と、人を育てることの重要性を強調した。
〈畜産日報2022年3月4日付〉