〈令和4年4月の需給展望 鶏肉〉国産生鮮は引続き量販店需要、ムネ・ササミは加工向けに堅調
3月の鶏肉需給は、前半が首都圏などでのまん延防止等重点措置により、国産生鮮は量販店需要に支えられた。年始からの潤沢な凍結在庫も輸入品の世界的な高騰を背景に、加工筋からの引合いが見られ、年度末にはそれなりに在庫を消化したもようだ。
中旬にはまん防が解除され、居酒屋など外食需要も期待されたが、一定の自粛傾向となり量販店需要が続いた。さらに、下旬には調味料メーカーによるTVCMが放映され末端消費拡大が期待された。しかし、以前のような爆発的な売上増加にはつながらなかったようだ。生産面でも工場での人手不足から、骨アイテムまで手が回らない状況も見られる。
輸入品は、ロシアのウクライナ侵攻による穀物・飼料相場の高騰、豚肉価格高騰、欧米での鳥インフルエンザまん延により、ブラジル産を中心に需要が拡大、相場も上昇が続いている。急激な価格高騰から、一部では投機対象ともなっている。
輸入品の国内需要は、相場の上昇とリンクしておらず、まん防解除や春の行楽の特需もあまり見られなかった。それでも、から揚げ専門店や量販店の総菜需要の裾野がコロナ禍では拡大しており、末端消費量に影響は見られない。先々の輸入量減少幅によっては、高値でも買えない状況も懸念されるため、国内在庫を勘案しながらの必要量調達が求められる。
3月の平均相場は、日経加重平均でモモが630円(前月646円)、ムネが316円(322円)と正肉合計946円、前月比22円安となった。前年同月比ではモモが61円安、ムネは12円高となり、正肉合計では49円安となった。
〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめたブロイラーの生産・処理動向調査によると、4月の生体処理羽数は前年同月比1.1%増を見込むが、処理重量は0.2%減を見通している。3月は前半こそ例年以上に暖かい日が続いたが、中旬以降は気温が下がり、産地によっては増体が進まなかったようだ。
産地別では、北海道・東北地区は羽数が0.6%増、重量が0.6%増の微増を見込む。南九州地区では羽数が0.5%減、重量が2.6%減と減少の見込みとなっている。5月も全国平均で羽数が0.7%減、重量が1.7%減と減少傾向での推移を見込んでいる。
農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば、4月の国内生産量は14.3万tと前年同月比2.3%増、ほぼ前月並みを予測している。輸入品は、3月は前年同月のブラジル産輸入量が通関繰り延べにより多かったことから、22.9%減の4.3万tとなった。4月はブラジル産のオファー価格が高騰したことなどから、21.2%減の4万tを見込む。
世界的な鶏肉需要の高まり、欧米での鳥インフルエンザの発生などにより現地は強気な姿勢を崩さず、3、4月と連続で前年同月比2割の減少を見込む。そのため、2~4月の3カ月予測でも1割以上減少する見通し。
〈需要見通し〉
国産品は引続き量販店需要に支えられるが、部位はモモからムネ・ササミにシフトしていくと見られる。手羽関係もコロナ禍では通年で需要が見られるため、引合いを期待したいところだ。
量販店以外にも、輸入品高騰を受け、ムネ・ササミを中心に国産に切り替える動きも加速すると予測する。輸入品は、GWを前に人流増加による外食需要が期待される。他方で調達コスト上昇を受け、収益確保は難しい状況にあり、顧客へのデリバリーを優先せざるを得ない可能性もある。
〈価格見通し〉
国産生鮮相場は、国産需要以外にも輸入品の状況に左右されるため予測が難しい。モモは季節柄ジリ下げだが、輸入量によってはもちあい展開もある。ムネ需要は堅調で下げ要素は少ない。日経加重平均ではモモが620円前後、ムネは320円前後と見込まれる。農水省市況ではモモが630円前後、ムネは325円前後と予測する。
〈畜産日報2022年4月6日付〉