〈令和4年5月の需給展望 牛肉〉大型連休の外食需要は堅調、物価高が今後の不安材料に
例年、牛肉需要が活発となる春の行楽シーズン。ことしは、3年ぶりに行動制限のないゴールデンウィーク(GW)となったことで、飲食店や地方の観光・商業施設をはじめ、キャンプ場などは多くの人出でにぎわいを見せた。とはいえ、末端消費の面では、焼肉店などの飲食店やアウトドアでのBBQ・イベント関係など一部以外は全般的に振るわなかったもようだ。
5月は例年、消費疲れで単価の高い牛肉の消費は低迷する時期。一部の銘柄牛を除き、高級和牛の販売は厳しく、本来であれば、値ごろ感で需要を喚起すべき輸入牛肉も、円安の進展、不安定な物流事情で粗利を確保することが難しくなっている。需要の中心は焼材や切り落とし関係など、交雑の大衆規格が中心となりそう。このため、和牛去勢A5等級で2,600円前後、同A3で2,100円前後と前月・前年同月を下回ると予想。交雑去勢B3は1,600円前後、ホルス去勢B2(搬入)は1,100~1,150円程度と予想される。
〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測では、5月の出荷頭数は前年同月比4.2%増の8万3,100頭、1日当たりの出荷頭数ベースでは2.5%増と見込んでいる。品種別では和牛が3.4%増、交雑種が11.2%増、乳用種は1.0%増と全品種で増加の見込みだ。家畜改良センターの個体識別情報によると、3月末時点のホル雄15~18カ月齢の飼養頭数は同7.4%減と少なく、依然としてホル雄の供給不足は継続する見込みだ。
機構の予測では、5月のチルドの輸入量は同14.5%減の1万9,300t、フローズンが同12.4%減の2万3,700tと見込んでいる。チルドの一部は、GW前に通関する予定だった貨物が連休明けにズレ込むことになり、この辺の動向がマーケットにどう影響するか注視したい。
〈需要見通し〉
3年ぶりに行動制限のなかったGW期間中の消費動向だが、人出の増加で地方のロードサイドや観光地、SAを中心とした飲食店、イベント需要は概ね堅調だったようだ。原料コストが上昇しているものの、営業的には「業界としては底を脱して緩やかに良くなっていくのでは」(関東の業務卸筋)との見方も。
一方、量販店の精肉需要は都心部を中心に振るわず。流通各社のバイヤーへの聞き取りによれは、GW期間中の牛肉の売上高は前年同期比1割程度減少したようだ。「前年比はまったくダメだが、19年比ではプラスになった。全体的にはマイナスだが、焼肉関係は105%と好調だった」(本部:大阪府)、「昨年は緊急事態宣言が出ていた関係で、精肉(牛肉)はボリュームが出ていた。今年はデリカが伸びており、素材系(精肉)は買上げ点数も落ち込んでいる」(東京都)、「焼肉・BBQセットなど仕掛けた商品は売れたが、精肉全体の売上げは良くない。都心部からの人出は増えているが、我々精肉の売上げには結びついていない。むしろ、さまざまな食品が値上がりしており、これからはさらに厳しくなる」(茨城県)といった声が聞かれ、相次ぐ食品の値上げ、物価高も牛肉消費に暗い影を落としている。
「母の日」以降は催事もなく、昨年と同様に早い梅雨入りの可能性も指摘されている。出費疲れで需要は低迷し荷動きも鈍るため、在庫補充が一巡した後は、交雑など2~3等級の低級部位が中心となるものとみられる。
〈価格見通し〉
当面は2~3等級のスソ物相場は堅調に推移するとみられる。輸入品の高騰で交雑種と出荷減のホルスは堅調に推移しそうだが、中旬以降は末端需要が低迷し、枝肉相場もジリ安に転じるものとみられる。現状では、和牛は一部の銘柄牛を除いて、各等級で前月比100~180円の下げ、交雑は3等級で10~15円、ホルスは30円程度の下げが見込まれる。
〈畜産日報2022年5月12日付〉