〈令和4年6月の需給展望 牛肉〉不需要期に突入、末端消費の冷込みで上位等級は苦戦、「父の日」向けにホルス・交雑のヒレ、ロースは堅調
連休明けの節約志向が強まる時期に売込みをかける輸入牛肉も仕入れコストの上昇と不安定な物流事情から販促を仕掛け難く、牛肉のマーケット全体が低迷する状況となった。6月は基本的に不需要期の真っ只中にあり、これから各地で梅雨入りするなか、祝日もない。地方の観光施設や、焼肉関係など外食需要に期待したいところだが、宴会や接待需要の自粛で高級和牛の需要は引続き厳しい環境が続くと予想される。あとは「父の日」の催事にステーキ・焼肉の販売が計画通り進むか注目されるところだ。月間通してはこれといった需要の上げ要因は少なく、枝肉相場(東京市場)も和牛去勢A5で2,550円前後、同A3で2,050円前後、交雑去勢B3で1,550円前後、乳用種去勢B2で1,100円前後と予想する。
〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、6月の成牛出荷頭数は8万6,100頭(前年同月比2.1%増)、このうち和牛が3万8,800頭(同0.8%増)とほぼ前年並みの半面、交雑は1万9,600頭(同7.0%増)、乳用種は2万6,200頭(同1.2%増)と予想している。輸入はチルドが2万500t(同13.9%減)、フローズンが2万8,600t(同0.7%減)と供給は少ない。
輸入品のコスト高で交雑種の大衆規格やホル雄の引合いは堅調だが、和牛については7月以降に出荷を繰り延べる動きも出てくると想定される。乳用種のうち、供給不足に悩むホル雄については、4月末現在の個体識別情報を見ても15~18カ月齢の全国飼養頭数は前年同期比で7%少ない状況となっている。
〈需要見通し〉
末端需要は大型連休以降、冷え込んでおり、牛肉全体の荷動きは振るわず、6月に入っても月初の手当て買いも見られない。末端も前月から在庫を持ち越しているようだ。「父の日」の催事に向けては、すでに春の大型連休前の商談で発注量を決めており、これからロースや焼き材など納入に向けた作業の動きが活発化するだろう。ヒレはホル雄を中心に在庫は足りず、各社引合いがあってもモノを確保するのに苦労している。
もっとも、和牛など上位等級ほど一部の銘柄牛を除いて需要は悪く、ロースを含めてバラシでの販売は厳しい。カタロースは年末に向けて凍結に回す手があるが、切り落とし材などウデ・モモのスソ物の動きも例年より振るわないようだ。10日から外国人観光客の入国制限が見直されるが、需要家サイドも見込みで仕入れることは避けたく、インバウンド需要は手探りの状況が続きそうだ。
〈価格見通し〉
例年、6月の枝肉相場は前月比で値下がりの展開となる。相次ぐ物価の上昇で消費者の節約意識は強く、「多少値段を出せば動くような状況ではない」(関東の量販店バイヤー)。「父の日」の催事以降は、いよいよ末端消費の弱さが際立ちそうだ。もっとも、カタロースやロースについては、年末年始を視野に入れた商売も考えられる。凍結するため安いうちに枝を集めるなどして、中旬以降、枝相場が底打ちする可能性もある。このため、6月の月平均相場は和去A5等級で2,550円前後、同4等級で2,250円前後、3等級で2,050円前後、交雑去B3で1,550円前後、同B2で1,400円前後、乳去B2で1,100円程度と予想される。
〈畜産日報2022年6月7日付〉