信州ハム 爽やか信州軽井沢シリーズ「ツインパック」好調、2種の味を楽しめるウインナー「熟成あらびき・3種のハーブ&レモン」がけん引/宮坂正晴社長インタビュー
信州ハムは6月決算だが、売上高は1%未満の微減で着地した。
利益面では、過去最高益の前期を下回ったものの、計画を達成した。前期は新型コロナによる内食需要が追い風になったが、これが収まり、利益はコロナ前のレベルに落ち着いた形だ。今回、「爽やか信州軽井沢」シリーズ・ツインパックを中心に食肉加工品の現状を宮坂正晴社長に聞いた。
――直近の状況はいかがでしょうか。
販売面をみると、無塩せきの「グリーンマーク」シリーズ、熟成の「爽やか信州軽井沢」シリーズは前年を上回った。当社は、この付加価値のある二つのシリーズについて販売に占める割合を60%まで上げることを目指しており、今回58%まで上昇した。
この目標を設定した当初は40数%であり、順調に伸びている。無塩せきソーセージは、日本ハム・ソーセージ工業協同組合の集計によると、5%前後の増加となっているが、当社のグリーンマークシリーズもほぼ同様の伸びとなっている。グリーンマークは、新型コロナのように社会不安がある時期は特に伸びる傾向があり、背景には少しでも安心を求める消費者の皆さんの支持があると考えられる。
「爽やか信州軽井沢」シリーズも、「ツインパック」が伸びて全体でもプラスとなった。「爽やか信州軽井沢」シリーズは、1980年に誕生した。昭和後期、ハム・ソーセージの価格競争が起こり、品質も低下した。そうした中で、「自分でつくった商品は自分で責任を取る」という初代社長の原点に帰り、価格にとらわれず、美味しさを追求し続けたこだわりのハムを作り上げた。
おいしい”をコンセプトに、名前も信州が誇る、観光地『軽井沢』と命名した。ハムソー業界で、地名を入れた商品はこの商品が初めてとなる。なお、同シリーズのハム・ソーセージ・ベーコンは、JAS規格制度のもと、ハムで7日間以上、ソーセージ3日間以上、ベーコン5日以上熟成させ、旨みと風味を引き出した特色JAS(熟成JAS)の商品だ。現在、この爽やか信州軽井沢シリーズは20アイテムをそろえている。
――好調な商品は。
ツインパック「熟成あらびきウインナー・3種のハーブ&レモン」が伸びてシリーズ全体をけん引する形になった。同商品の発売は2020年3月で、爽やか信州軽井沢シリーズの人気No.1とNo.2の2種類のウインナーを1パックで楽しめることを前面に出した。また、2パック連結であり保存に便利で、少し食べたいときに重宝する。1種類ごとにパックになり、2パックがミシン目でつながる。この2パックにはそれぞれに賞味期限がつく。他社にはない商品と自負している。
販売店としても、売り場面積が小さい店舗にも最適で、消費者にとっても選ぶ楽しみがあるなどの特徴から販売を伸ばしている。同商品の販売は今年1~6月で35%増と好調。この6月には月間5万パックまで増加した。独身を含めてテレワークが増える中で、ちょっといいものを食べたい、おつまみも欲しいという需要にマッチしたとみられる。
2022年3月には、軽井沢ツインパックの姉妹商品として、「熟成あらびきチョリソー・熟成ブラック&ホワイトペッパー」を発売した。チョリソーとブラック&ホワイトペッパーの辛口の2種のウインナーをセットした。より特徴のあるウインナーを、とのニーズに対応し辛みをアップさせた。
大手量販店でも、「ウインナーは、あらびきばかりで売場の鮮度感に欠ける」との意見も聞かれる。また、昭和の時代には、子ども向けがウインナーの主流だったが、今の令和の時代は多種多様化(2極化)が進み、より個性派、大人向け商品が求められる。売場の鮮度感を出したいなどのニーズにこたえた商品で、こちらも発売以来、好調に推移している。
――今回、2度目の値上げを発表しましたが。
11月から一部商品の規格変更および納品価格の改定を行う。すでに2022年3月1日からハム・ソーセージや調理加工食品等の価格改定を実施した。しかし、ハム・ソーセージの主原料や副資材の高騰、電気・ガスのエネルギーコストの大幅な上昇、物流コストの増加が継続し、更なる生産性向上、コストダウンの徹底を図ってきたが、企業内努力のみでは現状価格、品質を維持する事が困難な状況となった。改定率は商品ごとに異なるが2%~16%となっている。
ただ今回の値上げについては、棒値上げではなく、規格改定など多彩な形にせざるを得ない。一方で、秋の棚替えに向けて、コロナ禍で好調な既存のグリーンマーク商品、爽やか信州軽井沢商品を入れ込むことに注力している。
――昨年、長野県SDGs推進企業に登録されました。
この登録を機会に、人や社会・環境に配慮した消費行動「論理的消費(エシカル消費)」を推奨する取り組みを行っている。2022年6月には、エコステージ協会による「SDGs推進者・コンサルタント養成講座」を受講した。会社の事業活動とSDGsの目標を紐づけるのは容易ではないが、社内で受講内容を水平展開し、持続可能な企業に成長していけるよう活かしたい。
また、ウインナーの包装形態を巾着タイプからマチ付きの平袋への変更を進めている。業界の流れもあるが、当社もプラスチックごみの削減に取組む。これに連動してダンボールサイズの見直しを実施し、1ケース当たりの入数、移送の際のパレット積み付けのケース数を変更し、ダンボール資源の削減、積載効率の改善に努めている。
〈畜産日報2022年8月25日付〉