団体、消費者、学識経験者から意見聴取-自民党・TPP国内対策検討
自民党は9日夕、農林水産戦略調査会・農林部会の合同会議を開きTPP大筋合意を受けた国内対策の検討を進めた。同日昼の「各地で意欲的な取組を実践している担い手」からの聴取に続き、「関係団体、消費者、学識経験者等からのヒアリング」を行った。学識経験者の東大大学院農学生命科学研究科の中嶋康博教授からは「TPPがあろうがなかろうがすべき対策が変わらない。基本計画で示されたネガティブな状況がTPPによって悪化することが懸念される。ネガティブな状況とは、新規就農・投資を躊躇させることで、それが前倒しで発生するおそれがある」との指摘があり、参加した議員からは、「やるべき対策が変わらないのであれば、今回議論している対策と、現状指摘があって進んでいないマルキンの法制化などはすみ分けるのか(別のものか)」との疑問が上がり、小泉進次郎部会長は、「現地を回って短い期間で作られる対策の方が不安との声もあった。最優先でやるべきことをどう取り込めるかも重要だ。分離ではなく、最優先の課題をどこまで入れ込めるか」と検討の方針を示した。自民党は合計8の団体や学識経験者から意見を聴取し、畜産関連では日本畜産物輸出促進協議会の南波利昭事務局長が現状報告と要請を行ったほか、食品産業センターの村上秀德理事長らがTPP国内対策への意見を伝えた。
日本畜産物輸出促進協議会の南波事務局長は、畜産物輸出の現状として先行している牛肉の取組みが「輸出額5倍へ、何とか射程に捉えた」段階だと説明、TPPでは米国に現状の輸出量の10倍以上の無税枠が確保できたことをメリットとして示した。その上で、①海外の類似の輸出団体と同様に継続的なプロモーション活動が必要、②と畜処理・加工施設等の整備は喫緊、③牛肉の切り方、食べ方の教育、普及が必要、④輸出量に応じた国内生産頭数の維持・確保が必要–であることを伝え、対応を求めた。
食品産業センターの村上理事長は、「食品産業は、食料の6割を海外からの原料等の輸入に依存する一方、国産農林水産物の2/3が食品産業向けとなっており、国産農水産物の最大の需要者として国内農林水産業を支えている」との立場を伝え、TPPでは交渉においても原料と製品の国境措置の整合性が十分に確保されるよう要請してきたと説明した。ここから、①原料と製品の国境措置の整合性がとれなくなる業界等、大きな影響を受ける分野について、必要な対策を講じること、②TPP大筋合意を契機に“攻めの食品産業”を目指すべく、中小企業も含めた輸出支援策、HACCPによる衛生管理等の導入支援策、新分野の需要開拓、研究開発への支援等について、金融・税制も含めた広範な視点での支援策を講じること、③高品質な加工食品向け国産農畜水産物が、適正な価格で安定的に供給されるよう、国内の加工原料用農畜水産物の生産基盤の強化を図ること、④食品企業の太宗をしめる中小企業について、大筋合意内容や今後の対策等の問合せ窓口を設けるなど地域ごとに丁寧な情報提供を行うこと–を求めた。また、「加工食品の原料原産地表示の在り方の検討にあたっては、高齢化や商品の小型化の進展、情報技術の進歩等の実態を踏まえ、消費者・事業者双方にとって分かりやすい表示の在り方、表示の実行可能性、国際基準との整合性等に配慮したバランスのとれた慎重な議論をお願いしたい」と要請した。これについては、議員から、「想定される不都合とは何か」との質問が上がり、村上理事長は「大前提として、全て安全なものを使っていることを前提として表示をしている。原産地は安全であるかどうかではない。技術的には、原料の調達先がいろいろ変る中難しいということがある。また、TPPを契機としてやった場合、原料の供給側に衝撃も与える。食品の加工度によって、原料の違いの影響も違うため、必要性も違ってくる」と説明した。