【日本ハム 井上勝美取締役専務執行役員食肉事業本部長に聞く】㊤
本紙では4月から日本ハムの食肉事業本部を託された井上勝美取締役専務執行役員食肉事業本部長(=写真)に、上期の総括、下期の方針、ブランド食肉の戦略などをうかがった。井上取締役専務は、通算25年間、豪州に駐在し、約10万頭の牛の肥育に携わった。TPP大筋合意も踏まえ、食肉をめぐる状況がますますグローバル化すると考えられる中で、この経験を買われ、この4月から国内食肉、輸入食肉、海外事業を含む食肉事業本部全体を託されることになった。
–上期の実績はいかがでしたか。
国内生産(ファーム事業)は、相場高の中で、牛・豚・鶏で生産性の向上を図ったことにより、利益面では好調に推移した。数量面では、豚の生産は、昨年のPED(豚流行性下痢)から回復したものの、なんとか100%に戻った状況。鶏の生産は2%増加しており、生産量はゆっくりしたペースで回復している。牛は、相場高によって単価が高く利益的には良いが、素牛不足で子牛価格が高く、数量ベースでは数字を落とした。
販売は、鶏の販売が非常に好調で、単価も高値で堅調に推移した。これは多分に牛・豚の価格が高いことが背景にある。豚は、第1四半期は豚価が高く販売は厳しい状況だった。しかし豚価は第2四半期の後半に入り下がってきたことで販売しやすくなり、現状では好調に推移している。牛は、枝肉相場が上昇の一途を辿っている。その分の価格転嫁ができず利益面で苦戦し、数量面でも95%前後にダウンしており苦しい状況だ。
輸入食肉では、輸入ビーフは円安と現地相場高で単価が高く、在庫及び仕入れ価格が上昇しているが、国内の販売価格にそれほど反映できず苦労した。ただ、その中でも輸入チルドビーフは、当社グループの豪州の牧場で以前から導入しているグレインフェッドである『ワイヤリーフ』、『大麦牛』が数量も価格も安定して出荷できたことで堅調に伸ばすことができた。
輸入ポークは、チルドポークは国内の豚価が高い中で前半は堅調な販売ができた。数量、利益面とも貢献した。フローズンポークは、昨年からの単価の高い在庫があったことに加え、国内の消費が伸びなかったことで苦戦した。しかし、ここにきて数量も動き、在庫も前年のものが一掃された。現地価格も、米国は堅調もEUは若干下がり、今後は売りやすくなると見込まれる。
輸入チキンは、仕入れ価格が高いが、売価も堅調で数量を大きく伸ばし、販売面、利益面でも好調だった。