5月末の提言に向け、生産法人からヒアリング-自民・畜酪小委員会
自民党は16日、畜産・酪農対策小委員会(坂本哲志委員長)を開き、肉用牛・酪農の生産基盤強化と配合飼料価格安定制度の安定運営に向けた議論の一環として、農業生産法人からのヒアリングを行った。今後、数回のヒアリング・議論を重ね、5月末をめどに提言書を取りまとめる方向で、早ければ2016年度の補正予算にも反映させる意向。ヒアリングでは地域の肉用牛繁殖基盤の強化のために、長崎・壱岐市でキャトル・ステーション(子牛共同育成施設)とキャトル・ブリーディグ・ステーション(繁殖支援施設)を運営する壱岐市農業協同組合をはじめ、酪農経営の㈱TACsしべちゃ(北海道・標茶町)、㈲アグリファイン(岩手・花巻市)の3社から、地域と連携した畜産・酪農経営の取組みが紹介された。
壱岐市農業協同組合の川﨑裕司組合長の説明によると、JA壱岐市管内の肉用牛繁殖経営は、高齢化と後継者不足に伴い飼養管理や粗飼料生産などの労働が負担となり、減少傾向が続いていたという。そこで生産基盤の維持拡大と地域内一貫生産体制の確立のため、農家で生まれた子牛を市場出荷まで預かるキャトル・ステーションを2000年と06年に設置、09年にはキャトル・ブリーディグ・ステーションを整備し、現在は肉用繁殖牛300頭、肉用子牛800頭を収容し運営しているという。
施設では、子牛を4カ月齢程度から子牛市出荷までの約8~9カ月間を共同で育成している(子牛市場まで運搬)。委託料は1日に当たり790円(うち20円が事故補償などへの積立て)かかるが「現状では農場は満杯状態」(川﨑組合長)という。そのほか、▽母子受託(分娩後、母子ともに受託管理:最長受託期間6カ月間)▽リハビリ(繁殖障害牛を受託し、妊娠させて返却:同6カ月間)▽繁殖育成(雌子牛を受託し、妊娠させて返却:同7カ月間間)▽一時預かり(農家が病気の際に預かり飼養:同3カ月間)▽哺育(母子受託で生まれた子牛や農家で生まれた子牛を3~7日齢で預かり、育成)▽初妊牛の育成–などに取り組んでおり、とくにいまは肉用牛増頭に向けて、子牛を購入し妊娠させてから農家に販売する初妊牛育成に力を入れているという。
川﨑組合長は、「当初計画よりも多くの利用希望があり、繁殖農家の管理労力の軽減や斉一性の高い子牛生産による市場評価が向上している」としたうえで、「キャトルセンターから出荷した肉用牛は(他の出荷牛に比べて)3万円程度高値が付いており、農家は(委託料を)10万~12万円を支払っても3万円高値が付くとして、施設は満杯状態にある」ことを紹介した。また、センターは地元の雇用(従業員15人)にも役立っているとする半面、「(繁殖)従業員・管理者の能力によって経営が大きく左右される」とも述べている。畜産・酪農対策小委員会は18日も畜産・酪農の生産者法人からのヒアリングを行う予定。