供給・需要とも安定-豚肉市場の動向
輸入ポークの需要広がる
ここ数年の国内の豚肉市場は、13年10月に国内7年ぶりに豚流行性下痢(以下、PEDv)の発生が確認されて以降、各地で発生し、翌年にかけて肉豚出荷に大きな影響を及ぼした。この疾病は豚肉生産大国の米国でも同年4月から多発しており、結果、米国産豚肉の相場高につながった。だが、昨年からPEDの影響が徐々に薄れ供給が回復したことで、昨年の卸売相場は国産・輸入品ともに概ね前年より安値で推移した。そして、ことしの豚肉需給は過去3年と比べて比較的安定して推移しており、この先も供給面では国産・輸入ともに現時点では大きなマイナス要因は見当たらない。このため概ね前年並みの落ち着いた相場展開が予想され、末端需要も年間通じて底堅く推移するものとみられる。
15年の豚肉供給量(部分肉ベース)は166・8万tで前年から3%減少した。このうち国産生産量は87・8万tで前年比7%減少、輸入品はチルドが32・2万tで同7%増加した半面、フローズンが46・8万tで12%減と大きく減少した。国産は2年連続で前年割れに、輸入フローズンも1割程度減少したが、輸入チルドは11年以降、5年連続で前年実績を上回っている。
国内相場を回顧すると、国産枝肉相場は、農家戸数の減少やPED(豚流行性下痢)による子豚生産頭数の減少で昨年夏までは概ね前年の出荷頭数を下回る月が続いたうえに、港湾問題で輸入チルドの供給状況が不安定になった結果、枝肉相場は春先や夏場に例年にない高値で推移した。とくに不需要期となる2月には東京食肉市場の上物で1kg当たり625円(税込み)に急騰、夏場も米国オークランド港のバース混雑の影響で輸入チルドのデリバリーに支障が生じたことで、例年なら下げ相場の展開となる7月も同646円と年間最高値を記録した。ただ、下半期にかけては、輸入チルドの供給が安定したことや、国内出荷頭数の回復で10月には461円まで下げている。
輸入チルドの仲間相場も、1~2月は米国産ロースで680円前後と前年の高値相場を引き継いだ。物流問題が解消されるにつれて4~5月には620円前後にまで下げ、夏場にオークランド港の物流遅れで反発したものの、その後は季節らしい相場の値動きとなり、概ね前年相場を下回る価格帯で推移した。
末端需要は、牛肉の相場高もあってスーパーでは利益商材として豚肉の販促に力を注いだ。このうち国産豚肉は、相場高のなかで末端価格が引き上げられたことで特売頻度がやや減少したものの、輸入チルドは比較的相場が安定していたため特売が組み易く、販売が好調に推移した。実際に15年の総務省の家計調査(二人以上の世帯、農林漁家世帯を除く)によると、1世帯当たりの豚肉の年間購入数量は19・8kg(前年比3%増)、支出金額は2万9701円(7%増)と、ともに過去5年で最多を記録している。また輸入フローズンは、一昨年からロシアの禁輸措置の影響で欧州からの輸入増加が目立っており、これに伴い需要も加工原料だけでなく、ホテル・レストランでのメニュー化や、トンカツなど業務用商材、コンビニ弁当の利用、さらに量販店での解凍品などここ数年で輸入フローズンポークの需要のすそ野が大きく拡大した一年となった。