家畜衛生主任者会議、輸出促進策や薬剤耐性対策への協力求める-農水省
農水省は21日、東京・霞が関の同省講堂で全国家畜衛生主任者会議を開いた。同会議は、都道府県の家畜衛生担当者や関係機関の情報供給の場として毎年この時期に開かれるもの。今回は、この4月に関係閣僚会合で薬剤耐性対策アクションプランが決定されたのを受け、獣医師への普及・啓発活動を中心に、計画目標の達成に向け協力を呼びかけた。5月開催予定の伊勢志摩サミット(先進国首脳会議)に併せた、閣僚会議でも薬剤耐性問題が主要議題として議論されるもようで、主催国として日本の役割に注目が集まる。この日の会合ではこのほか、15年度の家畜衛生に関する動向や、今後の推進方針についても意見が交わされた。小風茂消費・安全局長(川島俊郎消費・安全局審議官による代読)は「(平成)32年までに農産物の輸出額を1兆円にする、という目標を前倒しする形で政策を進めている。こうしたなか、家畜伝染病の発生による輸出の全面的停止措置を回避するために、米国、EU(欧州連合)との間で地域主義導入を目指した相互承認の締結に向け協議を進めている。国内の防疫体制が評価されることになる。また、輸出協議を進める上でも日頃の防疫活動が重要となり、現場で尽力している皆さんの活動が大きな意味を持っている。熊本地震の被災地に対しても、動物衛生という専門性を生かした形で、現地の要望に対して取り組んでほしい」とあいさつした。被災地の熊本
県からは、当初予定3人の出席が予定されていたが1人しか出席できなかった。
動物検疫所からは、主に輸出促進への対応や、輸入生体のリスク評価と輸入検査の再検証について、現状の取り組みが紹介された。輸出促進では、合理的な範囲での手続きの緩和を進めており、シンガポールからの旅行者を対象にお土産となる牛肉に対して簡易な輸出検疫証明書を添付するだけ販売できるようになったケースなどを例示。輸入生体のリスク評価と検査は、OIE(国際獣疫事務局)提唱の分析手法を取り入れたた形で、動物種と用途に応じた評価を開始していることが説明された。このほか、試験所に関する国際規格、IsO/IEC17025の取得や、入国者に対する質問など水際対策など、国内防疫体制の再強化を進めている現状が紹介された。
薬剤耐性対策アクションプランについては、ヒトの抗微生物剤の使用量を20年までに対13年比で33%減らす全体方針のほか、抗菌剤ごとに設定された動物分野での薬剤耐性率(採取した菌のうち薬剤耐性を備えた菌の占める割合)などの目標値を説明した。この問題は特に、抗菌剤を使用する生産現場の意識改革が重要で、生産者や獣医師に対する家畜衛生主任者の指導力が問われている。4、5月に予定されている伊勢志摩サミットの関係分野ごとの閣僚会議の場でも、薬剤耐性問題が主要テーマとして取り上げられる予定だ。