ユースティス英国農業担当大臣 過去の過ちを反省
「英国産牛肉の対日輸出を積極的に進めたい。日本市場では豪州と競合することになる」–。23、24両日に新潟市で開かれたG7(先進7カ国)農相会合出席のために来日していたジョージ・ユースティス農業・食糧・海洋環境担当国務大臣(閣外)が22日、畜産日報のインタビューに答えた。原種の宝庫と呼べる英国産ブランド牛は、適度な脂肪交雑の入ったのが特徴で、「独特の味わいが楽しめる」と、日本市場への参入に自信をのぞかせる。食品安全委員会による食品健康影響評価(リスク評価)に向けた厚労省の諮問手続きも最終局面に入っており、「年内の現地調査の実施」に期待を寄せる。23日午前に行われた森山裕農水大臣との二国間会談でも、牛肉問題が話し合われたもようだ。また、過去にBsE問題のきっかけをつくった点について、「間違いが犯された。日本の畜産関係者に対しては深く心を痛めている」と痛切な思いを語った。
アンガス、ヘレフォード…。英国の地方名を聞くだけで、牛の原種を思い起こさせる。それだけ、英国は、原種の宝庫であることを意味すると同時に、それぞれの牛肉ブランドを形成している。「ブランド牛としては、スコットランド、アンガス、ヘレフォード、ウェスト・ミッドランド、それにデボンに特徴的な牛がおり、ブランドによっては100年以上の歴史がある。それぞれのブランドは固有種により、特徴的な味がいろいろと楽しめるほか、適度な脂肪交雑が特徴だ。グラス・フェッドが中心だが、穀物肥育している農場もある」と、バラエティーに富んだ商品価値を語る。
「新しい市場を開拓したい」と日本市場に熱い視線を送る。厚労省との間では、獣医当局者との事前協議や質問票のやり取りなど、市場開放の前提条件となるリスク評価に向けて手続きが進んでいる。「(諮問に向けた最終確認となる厚労省による)英国の食肉処理工場などを視察する現地調査が年内にも実施される、と聞いている。あす(23日)に行われる森山大臣との二国間会談でも牛肉輸出を積極的に提案したい」。実際、会談では、牛肉を含む食料貿易について話し合われたようだ。
日本市場では、豪州産との競合が考えられ、「豪州産と競合することをここで明言する。実需者から言われたことに対して、きちんと対処していきたい」と新規参入の意気込みを語る。
実は、同国はラム肉の生産も盛んで、牛肉と同様に対日輸出をにらんでいる。「英国のラム肉生産は欧州で最大だ。品質も高く、欧州中心に積極的に輸出している。デボン、コンウォール、ウェールズ、それにイングランド西部地域が産地として知られる。ウェールズには地理的保護表示されたブランドもある。
一大産地で、対日輸出に積極的とされるウェールズには、人口よりも羊の飼養頭数の方が多い、とされる。対日輸出解禁は、牛肉の解禁を前提にしており、リスク評価は基本的に牛肉と同時に実施されることになる。「ラム肉についても、日本市場での競合相手は豪州になる」。
BsE問題発祥の地としての記憶が残る。「1980年代から感染が確認され、とりわけ90年代にピークを迎えることになる。現在は完全飼料規制など厳格なルールに基づいてリスク管理されており、英国内でも過去の問題となっている。リスク低減に伴い信頼も回復している。(肉骨粉など)適切でない飼料を与えてしまうなど、間違いが犯されてしまった」と反省の意を示すとともに、日本の畜産関係者への配慮をにじませた。