ジェトロで畜産物輸出における動物検疫の現状と課題をテーマにセミナー

ジェトロは10日、東京・港区の同本部で農林水産情報研究会セミナー「畜産物輸出における動物検疫の現状と課題」を開いた。畜産物などの海外展開へ向け、農水省消費・安全局動物衛生課の伊藤和夫国際衛生対策室長が「畜産物の輸出検疫協議をめぐる情勢」、同課査察調整班の櫻井友美子課長補佐が「農林水産物・食品の輸出戦略と動物検疫の現状」について講演を行った。伊藤室長は、政府の輸出戦略、動物検疫の現状、輸出検疫協議、相互認証など輸出環境を整えるための努力、シンガポールで可能になったお土産関係の事業の現状などを説明。事業者らへ向け「輸出解禁には場合によっては10年かかるものもあり、この国に輸出したいなど要望を出したからと言ってすぐにできるものでもない」として、「輸出がしたい、この国に売り込みたいということがあれば、2年、3年を見越した形で早めに要望してくれれば実現するかもしれない」と呼びかけた。

農林水産業の輸出戦略については、「日本は人口が減る中でいかに外国の需要を取り込むか。経済圏としてアジアは人口が増加する傾向があり、東南アジアなどは3食を日本のように家で食べる習慣がなく、朝昼晩とみんな外食をする。そういったところが一つの大きなビジネスチャンスとなる。日本の食品の質は非常に高く、その面で差別化を図って海外に高く売るということを行っている」と説明した。

動物検疫については「生産者にとっては、(疾病のまん延を防ぐため)厳しい措置をとればいいが、WTOの非関税障壁の問題もあり、関税ではない所で輸入を止めるには科学的な根拠をもってやらなければならない。検疫を必要以上にすることはできないが、自国が普通の基準より清浄性が高ければ相手にも求められるので、国の清浄度を高めて相手にも求めていく」という。輸出解禁に向けた協議については、「輸出するということは、自分の国がどうかという事を相手側から見られる。動物疾病を防ぐ目的があるため、提出する書類で相手が求めることは、獣医の人数はどれくらいいるのか、獣医は何年で資格を取るのか、獣医はどんな分布でいるのか、病気の発生に対してどのような検査をしているのかなど、国によっては分厚い資料になる。相手国によって求めるものが違うので国ごとに作らなければならない。実際に細かい条件を決め、証明書の様式を決める。場合によっては10年かかるものもあり、ここに輸出したいと言って要望を出したからすぐに輸出できるというものではない」と説明した。