初生牛価格が一段高、5月の交雑種は26万円台、乳雄は13万円台に

昨年末から高値圏内で貼付いている初生牛の取引価格は、5月に入って一段と上昇して記録的な高値を付けている。肥育素牛相場は年末出し向けの購買が一巡したことで一服感が見られるものの、初生牛については6月に入ってからも各市場の取引価格はさらに上昇しており、交雑種では北海道を除いて1頭当たり30万円を付ける市場が散目されている。この傾向がどこまで続くのか先が見通し難い状況に市場関係者は不安を募らせている。

農畜産業振興機構がまとめた全国25家畜市場の初生取引価格によると、5月の交雑種(雄・雌)の平均価格は26.5万円となり、前月から1.5万円ほど値上がりし、前年同月比で31.3%高となった。ヌレ子の価格も13.6万円で1.6万円値上がりしており、こちらは前年比76.3%高と異常な値上がり幅となっている。さらに初生牛相場は例年6~7月が価格のピークを迎えるが、6月20日現在の全国平均価格は交雑種で27.7万円(前年同月比24.3%高)、ヌレ子で13.8万円(45.0%高)に達している。たとえば交雑種では十勝中央が5月の23.9万円から6月(~17日までの平均)は25万円に上昇しているほか、千葉も5月の30.7万円から6月(同~18日)は32.1万円を付けるなど、各市場で値上がりしている。

酪農経営の副産物である初生牛の取引価格は、肥育素牛価格や気候的な出回り状況に左右されやすい。ただ、5月の取引頭数は交雑種で1万3,066頭(前年同月比3.8%増)、ヌレ子で9,004頭(同2.0%)と、むしろ初生牛の出回り頭数自体は昨対を上回っている。さらに、5~6月(20日現在)の肥育素牛取引も、交雑種については来年末の出荷に間に合うため40万近い相場をつけているものの、黒毛和種では年末出しの購入がピークだった4月以降一服感がみられており、乳雄もやや弱含んでいる。枝肉相場も依然、前年より高値にあるものの、4月をピークに5月、6月と緩やかに下げている状況だ。全体の傾向として初生牛の取引価格は素牛相場に連動するという構図は変わらないものの、ここにきて両者の価格の動きにややズレもみられる。市場関係者によると、もともと出回り不足のうえに素牛相場があまりにも高騰していることから、特にホルスについて、一部の大規模経営では素牛だけでなくスモール牛を購買する動きが強まっており、これが初生牛相場を吊り上げる要因になっているようだ。

今後の相場見通しについては、「夏以降一服するとしても、もともと絶対量は少ないため大きく値を下げることはないだろう。育成および肥育経営は高くても牛を導入するしかなく、この相場高の流れがどこまで行き着くのか全く見通しがつかない。むしろこの間の枝肉相場高による牛肉消費への影響が懸念されており、何らかのタイミングでこれまでの流れが急変するか非常に心配している」(市場関係者)と述べている。