健康と畜牛検査廃止へパブコメ開始、「3年間は必要だった」と熊谷委員-食安委
「国民に対しては不安が生じないようにリスコミ(リスクコミュニケーション)などを通じて丁寧に説明していきたい」–。健康と畜牛を対象としたBsE検査(国内検査)の完全廃止に関する食品健康影響評価(リスク評価)結果(案)について、パブリックコメント募集の開始を決定した食品安全委員会(佐藤洋委員長)は12 日、東京・赤坂の同委員会会議室で記者説明会を開いた。
会見のなかで熊谷進委員(写真㊧)は、13年5月の評価から3年間を、BsE発生状況を検証するための「経過措置」と設定したことについて「最終発生から11年を経過した、という事実だけをもって判断したのだと思われたくなかった」と話し、定型BsEの感染実態を正確に把握するうえで必要な3年間だった、との認識を示した。また鋤柄卓夫評価第二課長(同㊨)は「(サーベイランスとなる)高リスク牛を対象としたBsE検査や、と畜されるすべての牛を対象にした生体検査は継続される。今回の廃止は健康と畜牛に対するものであり、誤解がないように願いたい」と、飼料規制の徹底やsRMの除去など、食品安全を担保するBsE対策の必要性を改めて強調した。
食安委はこの日、13日から8月11日までの30日間、パブコメを募集することを決定。東京、北海道、大阪、福岡でリスコミを実施する方針を発表した。答申書を待つ厚労省も、健康と畜牛検査を行っている自治体や、国民に対して、今回の評価結果を丁寧に説明しながら必要な法令の改正手続きを進めることにしている。
記者説明では、プリオン専門調査会(座長=村上洋介・岐阜大特任教授)を担当する鋤柄課長が今回の評価結果の要点を解説。同調査会を管掌するとともに、13年評価書作成時、委員長を務めていた熊谷委員の立ち合いのもと、記者からの質問を受けた。
記者からは「OIE(国際獣疫事務局)では10年以上前から『BsEは終わった問題だ』との見解を表明していたが、今回の評価結果により、日本もようやく国際的潮流に追いついた、といえるのか」との質問が上がった。これに対して、熊谷委員はリスク管理機関からの諮問を受けて評価を開始する、という食安委の立場を踏まえ、評価結果のタイミングや時期についての言及は避け、「我々としては、最新の科学的知見に基づいて適切な判断をしている」とする基本姿勢を改めて強調するにとどまった。
一方、「結果として3年間の検証期間となった『経過措置』というのは、非定型BsEを懸念して設定されたものであり、必要な期間だったのか」との問いに対しては、「非定型というのではなく、あくまでも定型BsEの発生状況を正確に検証する意味で、必要な期間だった」と回顧。「BsE最終発生(BsE検査陽性)前後でリスクが錯綜している可能性もあり、最終発生後の牛についても、本当に感染していないかを確認する必要があった。最終発生から11年を経過した、ということだけで、評価したのだと思われたくなかった」と慎重な判断のもとで「経過措置」が設定された経緯を説明した。さらに、鋤柄課長も「13年の評価の時は、11年経過したばかりだった。最終発生後に生まれた牛について、本当に感染していない、と言い切れる状況ではなかった」とフォローした。
BsE問題に詳しい関係者は「経過措置」という3年間の“空白”について「科学的判断としては、どうかな、と思う点がないではない。ただ、食の安心という面で言えば、消費者への説明がし易くなった」と、微妙な思いを語った。
プリオン専門調査会は、健康と畜牛を対象としたBsE検査(国内検査)廃止について「現行基準(48カ月齢上以上)を継続した場合と廃止した場合……人への健康影響は無視できる」と結論付けている。