冷凍牛タンの上期輸入量は2.8%減、供給不足と旺盛な需要で相場は高騰

貿易統計によると2016年1~6月(上期)の牛タンの輸入量は7.5%増の1万7,502tとなった。うち冷凍は2.8%減の1万1,076t、チルドは31.5%増の6,425t。量販店の精肉売場で売られるチルドは3割増加しているが、チルドに数量が回ること、米国内市場との競合で、焼肉店で提供される冷凍タンは需要が拡大しているにもかかわらず減少し、これが冷凍タン相場の高騰につながっている。国別には、ほぼ全量日本に輸出される豪州は生体減で13.0%減の4,727t、米国は14.7%増の8,936tとなっている。

牛タンはもともと日本のみで消費され、BsE以前は米国で生産される牛タンのほぼ全量が日本に入ってきていた。その後、BsEにより対日輸出がストップする中で、米国内やメキシコでも牛タンの市場が形成された。対日輸出が解禁され、月齢条件も変更されたことで、日本の業界では牛タン復活として消費拡大を図り、それに合わせて調達の拡大も図った。しかし、米国内の市場との競合で価格は高く、供給量も伸び悩んだ。2013年2月の月齢条件の変更(20カ月齢から30カ月齢に)で、数量が拡大したが、価格は期待したほど下がらなかった。

一方で、国内では焼肉業態はここ数年間、前年同月を上回る好調を続け、牛タンの消費は拡大を続ける。さらに、月齢変更で輸入量が拡大したことを機に、仙台などの牛タンチェーンが全国的に展開し牛タンが再びブームになっている。また今年に入って顕著なのは、量販店でチルドタンの扱いが増えていること。牛肉では、昨年末以降、焼材が好調で、季節に関わらず焼材が店頭に並んでいる。その中で、変化を付けるために焼肉セットとして牛タンなどを販売する例が増え、現状では厚切り牛タンが単体で販売される。量販店としては、相場は高いものの、厚切り牛タンで100g459円(税抜)など、和牛のモモ並みの価格で販売でき、相場高の和牛からこうした牛タンや焼肉セットで売場をつくるケースが増えている。旺盛な需要から、牛タン不足が深刻で、米国では牛タンを手当てする場合、米国内で余剰するチャックアイをセットで買ってほしいとのオファーも聞かれる。

こうした中で、米国冷凍牛タンは、米国国内やメキシコとの競合だけではなく、チルドとの競合で数量が絞られ価格が高騰している。本紙の輸入牛内臓相場でみると、15年8月上旬の相場は、米国産で1,300~1,350円、豪州産で870~950円、NZ産で800~850円だったが、今年8月上旬には円高の中でも米国産で1,800円前後、豪州産1,700円前後、NZ産1,600円前後まで上昇した。今後これ以上の高騰は考えづらいが、下げ要因も見当たらず、この価格で高止まりすると見込まれる。