【HACCPの義務化】零細事業者の事業継続に懸念との指摘も

厚労省は、零細企業も含めたほぼすべての食品事業者にHACCPの導入を義務化する考えだ。同省では今年3月に「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会」を設置、すでに中間とりまとめを行い、15日には中間とりまとめに対するパブリックコメントの募集も終了した。12月にはこれを踏まえ、最終とりまとめが行われる。しかし、義務化した場合、零細事業者で営業許可が取れなくなることも考えられ、中小零細企業の切り捨てにならないか危ぐする声が聞かれる。

厚労省では、HACCPについて▽基準A=コーデックスのガイドラインで示された7原則をすべて実施、▽基準B=危害要因分析、重要管理点の決定、モニタリング方法、記録作成・保管の弾力化を検討–の2つの基準を示したうえで、「いずれの食品事業者にも基準Aによる衛生管理を原則とするが、従業員が一定数以下の事業者、もしくは、提供する食品の種類が多く、かつ変更頻度が高い業者や一般衛生管理による対応が困難な業者など一定の業種については、基準Bによる衛生管理でも差し支えない」との案を示している。

これを見る限り、零細事業者でも、基準Bを取り、要求事項を弾力的に運用されることで、問題なく事業を継続できると考えられる。

しかし、問題なのは、HACCP義務化以降の監視指導の在り方だ。都道府県知事などに営業許可を申請する場合、申請の段階でHACCPに基づく衛生管理計画を策定・保持していることが要件となり、内容に重大な問題・誤りがある場合は改善を指導する。営業許可の更新申請時にも同じことが求められる。つまり、たとえ基準Bであっても、対応が不十分であれば、営業許可を受けることができなくなる。もちろん、国民の安全を考えれば、衛生基準の高度化は必須だ。

基準B向けに手引書の作成、重点的な指導助言が必要ともされているが、はたして1~2人規模の零細事業者にとって、対応が可能なのだろうか。

同検討会では、この間6回にわたり、24の業界団体からヒアリングを行った。当然ながら、業種ごとの特性や事業者の規模を踏まえた配慮、支援の必要性が指摘された。