12月の豚肉需給展望 出荷増加が見込まれる中、タイミングにより崩れの懸念も
11月は農水省の予測などから見て多めの出荷が予想されていたが、一部産地での豚流行性下痢(PED)や呼吸器系の疾病による発育不良で中旬にかけて1日当たり6万頭台後半のと畜が続いたことで、需要の端境期にありながらも豚枝肉相場は上物税抜きで473円、税込み511円(東京市場)となった。11月が予想よりも出荷が絞られた半面、農場としては好豚価が見込まれる今月中に滞貨在庫をはき出す意向が働くとみられる。一方、流通サイドは年明け後のポジションも視野に早めのオーダーを受けており、先手で枝肉の手当てをしている状況にある。このため今月の豚価は、中旬にかけて税抜きで520~540円程度と予想するが、農家の出荷増加のタイミングによって大きく変動するといえ、月間通して520~560円程度に価格差が生じるとみられる。月平均では540円(税込580円)前後。とくに手当てが一巡した後に出荷増のタイミングがズレた場合、500円前後に崩れる可能性もある。
[供給見通し]11月の肉豚出荷頭数は速報値で138.6万頭(前年同月比1.7%減)となった。農畜産業振興機構の需給予測(11月24日公表)よりも8.7万頭下回った。産地では気温低下に伴い呼吸器系などの疾病で増体率が低下していると指摘されている。これが10月に続き11月も当初予想よりも少なめの出荷になったとみられる。とくに11月後半にかけては豚価上昇を見込んで出荷調整をしている経営もあるとみられ、これら農場の滞貨在庫が今月のどのタイミングで出てくるかがポイントとなる。上述の機構予測によると、12月の出荷は152.1万頭(前年同月比2.5%増)、1日当たりの出荷頭数ベースでは4.1%増と予想。農水省の肉豚出荷予測(11月9日発表)では151.1万頭(同2.0%増)と予測され、前年よりも2~3%程度多めの出荷が予想されている。またチルド豚肉の輸入量は、末端の販促が国産生鮮物にシフトしているため、振興機構の需給予測でも12月は2.9万t(同0.3%減)にとどまるとみられている。
[需要見通し]先週は関東地域でも11月として54年ぶりの初雪・積雪となるなど、いよいよ寒さも本格化し、量販店での豚肉需要はバラなど鍋商材を中心に堅調に推移しており、在庫も締まっている。12月も月間通してバラを中心に堅調な需要が見込まれ、とくにクリスマスに向けてはスペアリブ、その後は角煮などカタロースの荷動きもより強まってくると予想される。量販店も、年間通してもっとも売上げが見込まれるこの12月前半にかけて販促を強めるとみられる。
今後、何時のタイミングでどの程度出荷が増えてくるのか読み難いなか、カット筋では、賞味期限や繁忙期の工場の処理能力、曜日回りの関係で年明け第1週目の稼働日が少ないことなどから、得意先から前倒しでオーダーを受けながら、先手で枝肉の手当てをしている状況にあるようだ。とくに中間流通事業者ではグループの農場に対しては早めの出荷を要請しているという。このため、中間流通の手当ては12月第2週後半から第3週がピークで、4週目からはパーツの動きが本格化するとみられる。
[価格見通し]上述の通り、業界内では今後の農家からの出荷動向に注視しており、年末需要に向けて早めの仕込みが進んでいる状況から12月中旬まではジリ高を続け、その反動で後半にかけていったん下落、さらに年末の際に反転するパターンとなりそう。このため前半にかけては税抜きで520~540円程度(税込み560~580円)まで上げ、枝肉の手当てが一巡した中下旬にかけて500~520円(540~560円)まで下がるとみられる。年末最終の手当てなど上昇を加味すると、月間通して520~560円(560~600円)程度とみられる。