【USMEFジャパン開設45周年】日米食肉業界をつなぐ架け橋に、マーケットの変化を捉え多様な提案を業界に、消費者に届ける/山庄司ディレクター

USMEF 山庄司岳道ジャパンディレクター
USMEF 山庄司岳道ジャパンディレクター

米国食肉輸出連合会(USMEF)日本事務所は1977年12月に開設され、今年で開設45周年を迎える。以来、45年にわたって日米の食肉業界の緊密な関係づくりに注力し、日本の消費者にアメリカンミートの魅力を伝えてきた。キャンペーンやプロモーション、メニュー提案などの活動は、日本市場でのアメリカンビーフ、ポークの需要拡大に貢献するだけなく、「赤身肉」「かたまり肉」「熟成」といった昨今の肉ブームをけん引するなど、日本の食肉消費の拡大、日本の食文化の発展にも大きく貢献してきた。

次の50周年、60周年に向けて、USMEFはどのような役割を担っていくのか、山庄司岳道ジャパンディレクターに聞いた。

USMEFは1976年に米国デンバーで本部が発足してから1年後の77年12月に日本事務所を開設しました。海外事務所として日本が第1号となります。

USMEFは現在、世界11カ国・16事務所を展開しており、日本事務所はこれらの先駆けとして設立され、当時からいかに米国食肉業界が日本市場を重視してきたことの証といえます。85年には米国で海外市場開拓を目的としたTEAマネープログラムが創設されたことを機に、本格的なマーケティング活動が始まりました。

82年にはフィリップ・セング氏がアジア代表として日本に駐在し、日本の業界関係者との関係を構築・深耕しました。

USMEFは過去45年にわたって様々なマーケティングを実施してきました。70年代から90年代にかけては日本市場でのアメリカンミートのポジショニング確立を目的に、キャンペーンやセミナーなどを通じて、アメリカンミートの美味しさや違いなどを伝える活動に注力しました。

そして、01年の国内初のBSEが大きな転換点となり、これまでの主体だった業界へのトレードプッシュに加えて、消費者へのアプローチも強化することになりました。「アメリカンビーフがよくわかる本」をはじめとする消費者向け教材を発刊したほか、主要5都市でのタウンホールミーティングの開催、民放のミニ番組のスポンサーやTVスポットCMを通じて、消費者向け情報発信に力を注いできました。この間、業界向けにもアメリカンビーフの輸入再開を踏まえて、当時の20カ月齢の輸入制限に対応したガイドブックの制作、BSE対策に関する業界向けセミナー、06年の「We Care」ロゴの導入、13年の月齢制限の引上げ、19年の月齢制限撤廃など、市場環境の変化にあわせて様々な活動を展開してきました。アメリカンポークも、日本の輸入豚肉市場での8年連続シェアNo.1を前面に訴求した各種キャンペーンをはじめ、ブランドポークの支援、「ローストポーク」「バックリブ」のプロモーション、流通・外食企業とのコラボによる販促企画などを展開してきました。

コロナ禍の現在は、オンラインによるセミナーやYoutube「アメリカンビーフ&ポーク公式チャンネル」による動画配信、SNSを通じた情報発信にも力を注いでいます。こうした新たなツールを上手く活用しつつ、感染対策を講じたうえで従来の対面式も組み合わることで、様々な情報発信を進めていきます。

〈一歩先でなく、半歩先の提案を〉

現在、我々日本事務所の活動はほかのUSMEFの海外事務所の活動にも生かされるようになりました。とくに商品化、メニュー、売り場提案のガイドブックは30冊以上に上りますが、 これらは中国語や韓国語にも翻訳されています。各国流通チャネルは異なりますが、カットを含めた日本のマーチャンダイジングは、アジア市場でかなり参考にされていると実感しているところです。

我々のマーケティング活動もこの45年間で大きく変わっていきました。コロナ禍では、マネキンによる試食販売が難しくなり、セミナーもオンラインで開催するようになりました。しかし、私どもは食を扱っている組織のため、お客様には実際に食べてもらうことが最も重要です。今後はオンラインも併用しつつ、実際に各地域に出向くことで、我々の提案に関してお客様に試食してもらい、意見を伺う活動に力を注いでいきたいと考えています。同時に、コロナ禍を機に拡大してきた「テイクアウト」「デリバリー」といった、時代に即した新たなニーズへの提案も強化していきます。

日本の食肉市場は、すでに成熟期にあり人口も減少するため、将来に関して悲観的な意見も多いのは事実です。しかし、日本人の食肉需要は1人当たり年間35kgと世界的には低く、食肉に対する潜在的な需要は高いといえます。とくにシニア層の需要の伸びは、厚労省の調査からも高いことが分かっています。現在、日本市場でアメリカンポークは第1位のマーケットシェア、アメリカンビーフは、豪州に次いで2位のシェアを誇っており、市場規模(食肉の需要)全体を拡大させることは非常に重要であり、今後も拡大すると考えています。

もっとも、かつてのように素材の提案だけで売れた時代から、現在はメニュー、食べ方、料理方法の提案をしないと売れない時代となりました。今後も、小売りに向けてはどんな売り場づくりがより効果的か、また外食に向けては新しいレシピやプロモーションなど、より踏み込んだ提案が求められます。

今後、USMEFの果たす役割は、これまでと同様、マーケットの変化をマーケットからヒアリングし、ニーズに対応すべく新しい提案を提供し続けます。「かたまり、熟成、赤身肉」といった提案など、いち早くマーケットの中で、その兆しである「けむり」を見つけることが重要です。また、「ポークバックリブ」などマーケットアクセスから今後期待できる商材を探し提案していきます。これからも、USMEFでは一歩先を行くのでなく、実現できる半歩先の提案を通じて、関係業界のビジネス拡大と日本の食肉マーケットの拡大に貢献する活動を継続していきます。

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近年の食肉をめぐる情勢は、世界の需給変動や、口蹄疫、鳥インフルエンザなどの家畜の疾病問題やBSE輸入制限の緩和など制度の変更、新たな規制などにより大きく揺れ動いており、企業の業績にも大きな影響を与えております。畜産日報では、こうした食肉をめぐる毎日の動きとともに行政・業界の対応、需給・相場の動向と見通しなど、解説記事と合わせて分かりやすくお伝えしております。昭和35年の発刊以来、食肉業界から最も信頼されている日刊の専門紙です。

創刊:
昭和35年(1960年)3月
発行:
昭和35年(1960年)3月
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